その他

意識の高さはカタカナの多さ?

意識の高さはカタカナの多さ?

●特定のことに関しては人がおどろくほど良く知っているのに、特定のことに関しては人が引くほど何も知らない。
私はこの年になるまで【ネグレクト】を知らなかった。
そんなの習ってないよ、と言いたい気分だが一般常識の多くは学校で習うものではなく日常生活のなかで学んでいくものだ。
【ネグレクト】を知らないでも生きていけるが、知らないままで一生やっていける保証はない。
学ぶとは、すすんで恥をかくことかもしれない。

●あるYouTube動画を見ていたら【ネグレクト】という単語をしばしば使っている。
「この犬は前の飼い主からネグレクトされていたのでしょうね」とか、「ネグレクトを受けた犬の何割かは人間に対して攻撃的になるのです」とか。

●ネグレクトって何だ?と思い、スマホで検索したら【無視すること。怠ること。】とあった。
なので私は、犬というのは飼い主が無視しただけで攻撃的になるのかと理解した。
うっかり犬を無視したら大変なんだな、という軽い驚きを感じたわけだが、実は【ネグレクト】に育児放棄、飼育放棄という意味があるのを知ったのは数日後だった。
無視だけではなく、放置したり虐待したりすることも【ネグレクト】に含まれると知って先の動画の真意がようやく理解できたわけだ。

●私たちは日常の生活や仕事のコミュニケーションのなかで平然と英単語を織りまぜる。
次の五つのうちあなたは何個理解できるだろうか?

  • カミングアウトすると、私は甘いものが苦手なんです
  • 今日のミーティングのアジェンダはこちら。お手元にあるのが先生のレジュメです
  • 従業員のエンゲージメントを高めるために何をすべきか、君の意見を聞きたい
  • 食事会は明日の19時スタート。パンクチュアルな会だから頼む
  • あなたが今日発表された内容のエビデンスを知りたい

五つともOKの人は全体の1割にも満たないのではないか。
ことほどさように英単語は危うい。

●「弊社はいま、アフターCOVID-19におけるマーケティングプランを再構築する必要に迫られています。従来のパラダイムがシフトした今、我々がまっさきにフォーカスすべきは、プライオリティのリニューアルです。コア・コンピタンスを今まで以上に自覚し、新たなオープンリソース社会におけるアライアンスのあり方やコミュニティを再定義し、カスタマーエクスペリエンスの向上というミッションに向かってトータルリソースを結集すべき時です。スタッフ全員がモチベーションとエンゲージメント向上につとめ、今回ローンチするニュープロダクトに一丸となってアタックして参りましょう」(ユーザビリティ・コモディファイ・エンタープライゼス CEO,CTOウォーレン・タケザワ)

●意識高い系の会社だとこういう社内文書が行き交っていることだろう。
これが実に危ない。
なぜなら、大半の社員が意味を理解していない。
何なら書いた社長本人が真意を理解していない可能性がある。
どうせなら次のように日本語だらけの文章にしてほしい。
ほぼ同じことを言っているのだが、理解度は俄然変わってくるはずだ。

「今回の新型コロナの影響で人々の暮らしや仕事の仕方が大きく変わりました。当然、私たちの仕事のやり方も変える必要があります。

マーケティングや営業ももう一度、何が本当に正しいやり方なのかを考え直す必要があります。経営計画にもとづいて部署ごとに優先順位を決め直してください。

我社の真の強みは何なのかを今まで以上に強く自覚し、自社単独で動くべきことや他社と共同で動くこと、お客の声を聞き、それを取り入れる方法などを今一度考え直すことにします。

我社が一番大切にすること、それは「顧客満足の最大化」です。

全社員がその一点に向かって、もてる資源をすべて結集させましょう。

誰一人例外なく最高の仕事を行い、心をひとつにして経営計画の実現に立ち向かってください。まずは今回新たに発売する新製品の発売を是が非でも成功させ、勢いに乗りましょう。

・・・利便性向上株式会社 社長 武沢信行・・・

意識の高さはカタカナの多さになって表れるのではなく、日本語の多さになるのである。


Warning: Trying to access array offset on value of type null in /home/xs470582/e-comon.jp/public_html/wp-content/plugins/amazonjs/amazonjs.php on line 637