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水清ければ魚棲まず。企業清ければ・・・

水清ければ魚棲まず。企業清ければ・・・

●私がセミナーや動画で申し上げていることのなかに、「幹部にしたい人の15条件」というのがある。
その一つが『ルールや約束は必ず守り、周囲にも守るよう要求できる人』。
自分がルールや約束を守るのは当然として、意外にむずかしいのは周囲にもそれを要求できることである。

●時々、周囲に対して厳しすぎる人もいる。
社員がタバコを吸っている時間を勤務時間から除外するため、「みなし休憩時間」を制定して給料から天引きしようとした幹部がいた。
結局彼の天引き案は経営会議で却下されたが、一事が万事でその幹部は不公平なことやルーズなことが大嫌い。
社内でもかなり浮いた存在になっていた。

●なにごとも、過ぎたるは及ばざるが如しである。
昔から「水清ければ魚棲まず」と言う。自らが清廉潔白なのは良いが、他人のあらを見つけてはとがめだてするようなことばかりをしていると、仲間を失い孤立する。

●働き方改革もコロナ禍のおかげで一気に進んだ感があるが、残業削減もやり過ぎると、「残業の禁止」「残業行為を罰則化する」などといいだす企業もあらわれた。
残業をやらせ過ぎると企業に罰則が科せられるのは当然だが、社員がすすんで残業していることにペナルティを科す会社も出たのだ。
残業ゼロの会社を世間にアピールしたいのに勝手に残業してもらっては困る、というわけだ。

●だが残業削減もやり過ぎると、社員の働きがいを奪ってしまう危険性がある。
そのことを、ある金融アナリストがスコアで証明してみせた。
以下、出典は『日経ビジネス 2021/03.15 (017ページより)』で、おおよそ次のようなことが書かれていた。

・・・残業削減が「働きがい」をそぐ

若手社員の「働きやすさ」は高まる一方、「働きがい」が低下している。
「働き方改革」の浸透で残業時間の削減は多くの企業で進んでいる。
だが、そうした取り組みが若手の成長実感を得にくくし、働きがいをそいでいる可能性がある。
東証1部・2部上場企業の従業員が感じている「働きやすさ」と「働きがい」の推移を金融アナリスト、西家宏典氏がスコア化した。
西家氏はロコミサイト「オープンワーク」に寄せられた上場企業で働く従業員のロコミから、「働きやすさ」や「働きがい」などを分析するモデルを構築した。
ロコミの投稿者は20~30代が81% を占め、データには主に若手社員の意識が反映されている。
つまり、残業時間の削減は一般的に働きがいも高めると考えられがちだが、必ずしもそうは言えない。
特に若手の成長実感という面においては、残業時間の削減は逆効果となっている可能性すらある。
残業時間の制限で好きな仕事でも思う存分に取り組めなかったり、上司や先輩から学ぶ時間が限られたりという若手の不満は取材でも耳にする
過度な残業は論外だが、労働時間の一律制限で若手が成長実感を得られにくくなっているとしたら本末転倒だ。

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(以上、日経ビジネスより部分引用)

●ある会社で離職率の高さが問題になった。
定着率を高めるためには慢性的な残業体質を変える必要があると、残業削減運動に力を入れてきた。
この数年は着実な手応えを感じておられるようだが、この記事を私が転送したところ「うちも危ないところでした」と社長のレス

●「強制力を発揮して残業ゼロ化を目ざそうとしていた」というのだ。
経営計画に掲げた目標を達成するための時間は定時の時間枠内でやる。
自己成長や好奇心の追求のための残業時間は会社が許容した枠内で残業を認めるといった柔軟性が求められる。
「自己啓発は自宅でやってください」というのが会社の言い分だが、会社でしかやれないことも多い。

●なにがなんでもホワイト企業にする、と号令をかけてピュアホワイトを目ざすと「水清ければ魚棲まず」ならぬ「企業清ければ人棲まず」になりかねない。
多少の柔軟さを併せもった制度にして、オフホワイト程度の企業を目ざすのが良いと私は考える。