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続続続・これって不当解雇なの?

続続続・これって不当解雇なの?

●4回にわたってお届けしてきた不良社員の解雇問題。
今回のケースは二種類の問題をひとつの問題と錯覚しておられることでややこしくなってしまった。
最初の問題は、一年間も “無断欠勤” した社員を解雇することは不当か正当か、ということ。
これは文句なく正当である。
慣例としては14日が目安で、それ以上無断欠勤した者を解雇してもとがめられない
ただ、万全を期すためにはそのむね就業規則に明記したほうがよい

●一時、「モンスター社員」という言葉が流行った。
「労基署に行くぞ」と言って会社をおどしたり、実際に行って企業に圧力をかける今回の元社員も立派なモンスターだ。
無断欠勤して労働提供すらしない社員にはなにひとつおどされる筋合いはない。
「今から一緒に労基署にいきましょう。状況次第では会社があなたを訴えます」と事実認識を本人に教える必要がある。

●ふたつめの問題は、その社員が「ブラック」だと指摘する事実があるのかないのか。
もし社員の好意に甘えてきた歴史があるのなら、それは古き良き昭和の遺産であって今は通用しない。
平成を過ぎ、令和となったいま、「当社の慣例なので」という古い労働慣行は誰も認めない。
経営者側の時代錯誤もこれまた許されるべきものではない。

●「武沢さん、うちのような中小零細企業が法律どおりの労務体制で経営してたら利益なんて全部なくなってしまいますよ」と言う社長に何人もお会いしてきた。
20年前なら「たしかにそうですね」と私も一緒に笑っていた。
だが10年前にもそんな経営者がいたので、「社長、なに笑ってるんですか。そんな場合じゃないですよ。すぐに人が集まらなくなるし、今いる社員だってみんないなくなりますよ」と申し上げた。
それでも社長は笑っていたが、その会社はデキる社員が一人もいなくなった。

●もし令和になった今でも同様の考えをもっている社長がいるとしたら、大変危ない。
時間の問題で倒産または廃業することになる。
法律違反のうえで捻出する利益には価値がない。
法律違反しなければ利益が出せない事業などやるべきではないのだ。

●経営者は「労基署」「立ち入り調査」(臨検、監督などとも言う)という言葉をおそれる必要はない。
積極的に指導を受けよう。
労基署は社員の味方であって、企業にとっては嫌な相手だと誤解している方も多い。
だが、あくまで法の番人である。
正しいものの味方なのだ。

●往々にして弱い立場になりがちな社員が駆け込むことが多いので社員の味方に思われるが、正義の味方。
企業に正義があり、社員側に問題がある場合だって少なくない。
だから必要以上におそれる相手ではないのだ。

●社員が安心できる労務環境をつくり、腕のいい社会保険労務士を味方につけ、労働基準監督署ともパイプをつくっておけば労務の不安は一掃される。

●最後に私は「顧問弁護士をクビにすべきです」と相談者に申し上げた。
金額はお聞きしていないが、幾ばくかの月額顧問料を払っているそうだ。
その割には、「戦うのはやめましょう」「必ず勝てるとは限らない」と、不良社員と話しあうことを持ちかけたとか。
一緒に戦ってくれる仲間が及び腰でどうする。
この弁護士には顧問先を守るという意識が欠如している。
弁護士としての矜持がまったく感じられないのが残念だ。
その程度の助言なら、たまたま飛び込んだ街の法律事務所の受け付け職員だって言えることだ。
いったいなんのための「顧問」なのかとクビをかしげる。

●この稿、以上。たくさんのご意見、ありがとうございました。

「黒くぬれ!」はローリングストーンズのヒット曲で私もよく聞いたが、企業は「白くぬれ!」だ。

ただピュアホワイト(純白)もまた危険だ。
あすはピュアホワイトの危険性と、オフホワイト(象牙色)のすすめについて申し上げる予定。