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信長の真意はどっち?

●自社が存在することの目的や、今後目ざすものを簡潔に文字表現したものが「経営理念」である。
経営理念が存在しない会社はなく、そのことに気づいていなかったり成文化されていないだけのことだ。すべての会社に何らかの理念がある。

●私が以前勤務していた会社は「現状維持」を理念に掲げていて、もし入社前にそれを聞かされていたら入社を考え直したに違いない。
「借金返済・借金返済・借金返済」という経営理念をみたこともある。
「攻めっ気100%」「積極一貫」という経営理念もあるが、私はそういう挑戦のある会社の方が好きだ。

●会社ではないが、戦国武将もまた人を率いて大きな志を実現しようとしていた。武人でありながら経営者でもあった彼らもまた理念を必要とした。したがってコンサルタント役を必要とし、僧侶や医師、文化人にそれを頼むことが多かった。

●織田信長が手紙の印章に用いたのが「天下布武」という言葉。信長の相談相手であった禅僧・沢彦(たくげん)の考案と言われている
一般的には「天下を武力で布(し)く」、つまり、天下を武力で平定するという意味で捉えられているが、最近は別の説を唱える人が増えてきた。

●信長は上杉謙信や毛利元就に手紙を出しており、それにも「天下布武」の印が押されている。ライバルたちに「天下を獲るのは俺だ」と宣言するほど挑発的だったとは思えない。事実、その手紙の内容は非常に友好的なものだという。

●では「天下布武」の新しい解釈とはどのようなものか。
天下布武の「武」は、武力ではなく「武」本来の意味でつかわれているという考え方だ。「武」は「戈」(ほこ)を止める(とめる)と書く。「戈をもって争っている人を止める」という言葉本来の意味があるそうだ。つまり武士とは、争う人ではなく争う人を止める人なのだ。
「軍隊」と「自衛隊」の関係に似ている。「武」とは、あくまで争いの抑止力であり、自衛力なのだ。

●「天下布武」でもうひとつ注目したいのは「天下」である。今では「天下」=「日本全国」と解釈するが、戦国時代にはまだ日本全国という概念はなかった。京におられる天子(天皇のこと)の下(もと)、つまり、京都を中心とした近畿一円のことを指しているという新しい解釈がある。

●つまり、「天下布武」は武力で全国統一を果たすという意味ではなく、「天子様のおひざもとで争いごとをなくす」という意味である
実に控えめで穏やかなメッセージになる。

●「うつけ者」(阿呆)も演じられれば「鬼」にもなれる。一人で何役もこなせる信長ゆえ、「天下布武」にもいろんな解釈をもたせた玉虫色の理念にしたのかもしれない。

●「風林火山」は武田信玄の理念。上杉謙信の理念は「毘」の一文字。
「天下布武」の信長と並んでみな、文字が少ない。
家康はやや長めで、「厭離穢土欣求浄土」(えんりえど ごんぐじょうど)という仏教用語の八文字を理念にした。それでもまだ短い。
私もそれにならって「がんばれ!社長」の七文字を理念にした。理念は長文よりは短文に分があると思う。

★関連動画(がんばれ社長!チャンネル)
【YouTube経営者講座】:よい経営理念の特徴と最新事例(14:44)
 ⇒ https://youtu.be/OZ17yRkYMj8