Rewrite:2014年3月30日(日)
仕出し弁当の製造・宅配を営む会社を訪問した。この会社のK社長は、自宅の一室で創業してわずか8年で1,000食を超える弁当を毎日宅配する会社に育てたのだから、なかなかの実力者だ。
この会社の問題は顧客のリピート率だという。毎月2%程度の顧客が去ってゆく。新規に開拓する食数が年間で30%近く伸びているので、相殺すると昨年は10%ほどの売上げ増加を遂げた。
幹部会議で、私は質問した。
武沢「顧客の定着率に関する業界の統計はありますか?」
社長「私の知るかぎりはないですね、あるとありがたいのですが」
武沢「毎月20人~30人のお客が減っていますが、その理由は何ですか」
営業「調査してないので詳しくは分かりません。でもある程度の離食率はもともと見込んでいます。弁当業界は特殊ですから、2~3年で飽きられてもしようがないですね。」
武沢「計画では何%の離食率ですか?」
営業「計画では月間で1%と設定してあるのですが、実績では2%を超えています。」
武沢「思い当たる原因は何ですか?」
社長「問題はふたつあると思っています。営業の顧客フォローの甘さと弁当の品質です」
武沢「それぞれについて状況をお聞かせ下さい」
製造「じつは最近、弁当に髪の毛などの異物混入が続いた時期がありました。そのときにかなりの顧客が減りました。また、猛暑の夏にはご飯に異臭がするというクレームが出て、その対応も遅れたりして顧客が減っています。まぁ、なにしろパートさんばかりという特殊な業界ですから、思うようにミーティングが開けないのが苦しいところです」
私は幹部の口から「特殊」という言葉が出たのが気になった。
『組織の盛衰』で著者の堺屋太一氏は「特殊事情」は二度いうな、と指摘している。以下、引用。
・・・
戦闘であれば、天候が予想外の急変をしたとか、信じられないような通信機のトラブルがあったとかの特殊事情を持ち出すことを許せば、「あんなことさえなければ絶対に勝っていた。作戦の基本は間違っていなかった」という結論に達してしまう。
(中略>
確かに、戦争にしろ事業にしろ基本的には間違っていなかった計画が予想外の不運で失敗する例はある。しかし、それはきわめて珍しいことで、二度続くはずがない。もし特殊事情による「例外」が二度出たとすれば、基本構想のどこかがおかしいのである。成功体験に基づく事業を行って二度失敗すれば、それはもう絶対に特殊事情ではなく、本質的欠点があると思わなくてはならない。
・・・
K社長の会社も「異物混入」と「異臭」という “特殊” なトラブルが二度あった。また、パート比率が高くてミーティングしづらいという “特殊” な組織でもある。
何かが出来ない理由、何かの問題がある理由に “特殊” を使うのはやめようではないか。