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成長マニア ある社労士の場合

Rewrite:2014年3月26日(水)

「経常利益目標100億!株式会社○○ 代表取締役 ××××」と署名された読者からのメールが届いた。添付ファイルには、会社設立以降、今日にいたる会社の沿革と今後のビジネスプランがあった。
このM社長(43才)は、社会保険労務士の資格取得と同時に独立開業。最初の半年間は、顧問先一社だけの貧乏労務士だった。その彼が、今では株式公開に向けて一直線だというのだ。この10年ちょっとの間にいったい何があったのか?さっそくお会いすることにした。

「まだこの事業に参加していないとしたら、今からでも参加するか?」というドラッカーの有名な質問がある。それに対し彼は、ノーと答える場面が2回あったという。一回目は、開業後5年を経過したころだという。労務士事務所として数名の若手社員を雇用し、経常利益を数百万円出していた。しかし、そんなある日、3名の社員が集団で辞表提出。そろって独立開業するというのだ。資格ビジネスの宿命を悟ったM氏は、労務士事務所として成長する計画を断念。労務士事務所を閉鎖してしまった。そして金融公庫から500万円を借り、企業の総務部代行サービスと人材派遣ビジネスを開始した。この新事業がヒットし、正社員数15名、登録社員80名、経常利益2000万円を出すに至る。

次の転機はその5年後だ。コンピュータ技術をもった社員2名が開発した営業支援ソフトが大ヒット。25万円のソフトだが、全国に5000本を販売したという。そこで総務代行と人材派遣ビジネスを売却し、ソフト開発の会社に転身する。やがて日報管理ソフトや社員食堂管理ソフトなどが好成績を上げる。

そして最近、ついに大手のベンチャーキャピタルの資金の受け入れが決定。株式公開までカウントダウンとなった。

どうして従来の事業を存続させながらやってこなかったのですか、と尋ねたところ、「成長力が鈍い分野に自分がいることがいたたまれなく辛いのです。いつも最もホットなところにいたい」と明快だ。社員に付けられたあだ名は「成長マニア」だそうだ。事業が成長していく手応えがたまらなく好きで、今はスマートフォンで利用できる企業の基幹ソフトにゴールドラッシュの予感があるという。