Rewrite:2014年3月26日(水)
中小企業庁「創造的中小企業実態調査」(H8/12月)によると、日本とアメリカの創業環境の違いが明確にわかる。
開業などの初期段階の資金をどこから調達したか、との質問に対する結果だ。まず、日本の場合の資金調達方法ベスト3は次の通り。
( )内はアメリカの数字。
1位 自己資金 80%(8%)
2位 金融機関 59%(12%)
3位 親族等 56%(7%)
一方米国では次の通り。( )内は日本の数字
1位 個人投資家(エンジェル) 40%(5%)
2位 その他(友人・先生等) 18%(7%)
3位 ベンチャーキャピタル 15%(2%)
日本の中小企業では、自己資金と銀行借入に頼って事業を開始し、その後も資金調達の窓口を増やすことは少ない。せいぜい、銀行を複数使い分けていく程度に過ぎない。そして、自己資金以外の資金調達はすべて「借入金」と言ってもよい。
一方、米国では自己資金の占める割合は8%しかなく、他の大半が外部調達によるものだ。しかも「借入金」の依存度は低く、資金のほとんどが「投資資金」である。
この現象を招いている理由は2つあるのでないだろうか。それは、
1.法制度や社会通念の問題・・・国が銀行主導による大企業優先の経済政策をとってきたことにより、起業家支援策が遅れたこと。銀行が作り上げた担保至上主義のツケも大きい。
2.企業家の意識改革の遅れ・・・自己資金と銀行だけを頼りにし続け、投資を受けることに対して慎重すぎる経営者が多い。また、投資を受けるに際しては、株式の公開が前提となり、そこまでの将来像が描けない。
特に2については、優先株の発行やワラントなどの組み合わせにより、企業家と投資家とのパートナー関係は、いかようにも設定できることをご存知ない経営者が多いのが現状だ。
また、同庁での「創業上問題となる制度・社会的風潮」という質問に対しては、
1位 物的担保不足 79%
2位 既存借入金の残高が大きい 51%
3位 保証人不足 31%
4位 信用力不足 31%
と、なっている。
自己資金と銀行依存だけに頼った経営を脱却せねばならない。資金調達の多様化こそ日本経済活性化の鍵をにぎる。
スイスの国際経営開発研究所が、毎年発表している各国の競争力ランキングというものがある。これをみると日本は低落傾向を鮮明にしている。資金調達だけの問題でないことは明らかだが、若者がアイデアを試す機会が広がることや、失敗しても何度でも挑戦できる環境整備が日本を明るく強くする。
1991年 首位
1995年 4位
1999年 16位
2000年 17位
2013年 24位
言わずもがなだが、企業人の使命は市場と雇用の創出だ。社会資本の整備を待つだけでなく、投資資金を必要とするような大きな事業アイデアを紙に書くことがまず私たちに求められていることではなかろうか。