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事業の本質を見抜く目 フェデックスの場合

Rewrite:2014年3月26日(水)

世界最大級の航空貨物輸送会社「フェデックス」は、1971年にできた会社である。創業者であり、会長兼社長でもあるフレッドスミス氏が29才の時に起こした会社だ。
スミス氏が大学生のときに書いた論文は、「製品や荷物を全国のどこにでも一晩で配達するというビジネスはどのようにしたら可能になるか」というものであった。しかし、この論文の評価は「C」、つまり、あまり勉強しなくても取れる成績に過ぎなかったという。採点をした先生にとっては、きっと絵空事としか思えなかったのではなかろうか。とんでもない若者とペアを組むチャンスを逃したことになる。

スミス氏は創業時から、「荷物に関する情報は荷物と同じように重要である」という方針を取ってきた。そして、「笑顔よりもシステム整備」を合言葉に先端的な情報システムに投資を重ねてきた。その結果が世界一なのである。

今や日本でも荷物追跡システムは当然のサービスだが、27年前の創業時からそうした着眼点をもっていたことに驚く。

「倉庫とは、ある品物を保管しておくものであって、それ自体に経済的価値はない。倉庫で働く社員達の存在は時間と金の無駄でしかない。我社のトラックや飛行機そのものが、時速550マイル(880キロ)で走る倉庫なのだ」と断言する。
また、顧客に荷物の所在を知らせるだけでなく、それぞれの取引に関して完全な記録を残すために情報を利用している。その記録をもとに、サービスの質の向上のために3つの基準を設定している。

1.サービス品質指数・・・発送を評価する12の数値基準
2.顧客満足度指数・・・顧客がどの程度くりかえし利用しているかの36の数値基準
3.プロセス品質指数・・・個々の事業所にサービスシステム全体の監視機能をもたせた数値基準

これらの3つが正しく機能すれば、市場シェアは上がるばかりだという。

スミス氏は語る。
「経営者にとって大切なことがある。それは、以前にはまったく問題にならなかったことだ。つまり、情報技術や電気通信技術の可能性について基本的な理解をしておく必要があるということだ。おそらく10年前にはそんなことなど知る必要もなかっただろう。だが、今日、それを知らなかったり、後れをとったりすれば、致命的な失敗を招くことになる。技術専門家になる必要はないが、技術がビジネスやプロセスを根本的に変えてしまうことや、それが自分のビジネスにどんな影響を与えるかを理解しておかねばならない」

運輸業にとっての事業の本質は、荷物を運ぶことだけではなく、荷物と情報を同時に運ぶことであるようだ。我々も同様な視点から、事業の本質を再定義してみよう。それに向けたシステム整備課題がくっきりと浮かび上がってくるはずだ。さあ、あなたの会社の本質は?