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特異性

Rewrite:2014年3月26日(水)

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世界には素晴らしい音楽があふれているのに、なぜ日本にはそのほんの一部しか紹介されないのか?私たちはそんな疑問から会社をスタートしました。会社を設立した1988年当時、日本に紹介される洋楽は、ヒット・チャートを賑わす音楽がほとんどでした。私たちは、”だれもやらないなら、自分たちでやればいい”、そんな気持ちで海外CDの輸入を始めたのです。
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これは、設立11年目にして東証一部上場を果たした音楽ベンチャー企業「エイベックス株式会社」の公式サイトにあるものだ。同社の松浦専務(当時)をはじめとした20代の若者が起こした会社は、東京町田市の貸部屋からスタートした。持ち前の若さと機動力でビジネスは順調に立ち上がる。その後、音響メーカーの山水から依田巽氏を社長に迎え入れ、海外コネクションを強化。着々と企業基盤を固めていった。

栄枯盛衰の激しい音楽ビジネスでは、それまで幾多のベンチャーが成功し、そして短命で消え去っていった。そうした無数の教訓をもとに、同社が勝ち残ってきた背景にあるものは何か?

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今でこそダンス・ミュージックは街にあふれています。しかし、当時はまだまだアンダー・グラウンドな存在でした。ヒット・チャートではなく、ユーザーとしての自分たちの耳を信じながら、まだ陽の目を見ないアーティストやレーベルと契約し、日本で次々と作品を紹介しました。それがこれほどまでにインディー(独立系)レーベルのダンス・ミュージックが普及した要因なのです。”だれもやらない、だからエイベックスがやる”、この創業時の思想から、私たちは「特異性ある創造と貢献」という理念を導き出しました。
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「特異性ある創造と貢献」という理念は、同社のマーケティング活動の中で脈々と活きている。ニッチビジネスでの成功に満足することなくメジャーシーンでの活躍を夢見、それを実現してきた背景には、この経営理念の存在が見逃せない。特異性、つまり誰もやっていないことに挑戦し、成功させるという精神を大切にしてきたのだ。

・深夜の時間帯を使った音楽広告
・自分たちでディスコを作り、そこから流行を起こそうと「六本木ベルファーレ」設立
・国内アーチスト発掘のための全国横断12万人オーディション
・東京ドームを借り切っての5万人のディスコ大会
・東京ディズニーランドでのロングランにわたるダンスイベント
・リスクの高い映画ビジネスへの参入
・ウォルトディズニーの音楽を日本で発売する権利取得
・宝塚歌劇団との提携
・原宿にアーチスト育成スクール開校
・・・etc

そして今では、欧米に日本のアニメを発信するプロジェクトや、韓国の人気歌手を日本で売り出すプロジェクトが進行しているという。昨年ようやく300名を超えたに過ぎない企業であることを考えると、すさまじいばかりの事業展開力だ。

こうした表面だけを見ると「やっぱり華々しい業界だな、自分たちとは無関係だな」と思われるかも知れないが、そうではない。同社の活動を注意深く見ていると、我々にとってヒントが多い。それは、企画やイベントを成功させる知恵のふりしぼり方だ。

アイデアを成功させるためには、その企画が成功すると全員が信じ切れるまで付加価値を追加するのだ。アイデアの煮つめ方に最後のひとしぼりが必ずある。成功しない理由がないと思えるまで消費者にとっての魅力を付加してきているのだ。
「特異性」=人と違う、というだけでなく、特異性=最後のひとしぼりなのだ。

※この記事以降、エイベックスの経営理念は変更され、ホームページも一新されましたが基本精神は今も変わらないはずです。