当時高校生だったソフトバンクの孫正義氏は『ユダヤの商法』を
んで感動し、半ば強引に著者の藤田田(ふじた でん)氏に会いに行っ
た。
日本でマクドナルドを立ち上げたばかりの藤田から「これからはコ
ピュータの時代だ。オレがおまえの年齢だったら、コンピュータを
る」とヒントを与えられ、それがソフトバンク起業につながってい
『ユダヤの商法』は1974年に発刊され、当時社会現象を引き
た。総計240刷、82万7000部を売った『ユダヤの商法』が
ベストセラーズから新装発売された。
ユダヤ人からも「銀座のユダヤ人」と評された藤田流金儲け術の
意がここに詰まっている。私がアンダーラインを引いた箇所をご紹
しよう。
1.社長は”売れる会社”をつくれ
今となってはM&Aは至極当たり前の経営手法だが、半世紀近く前
藤田氏は「会社は愛の対象ではなく、利益をしぼり出すための道具
であり、頃合いをみて売却するもの」と考えていた数少ない日本人
だろう。
2.父親は他人の始まり
「さあ、お父さんに向かって飛んでごらん」
ユダヤ人の父親は、子どもが三歳くらいのとき遊戯台の上から父に
向かって飛びこませる。子どもが飛び込んだ瞬間、父親は手を引き
子どもは転倒してはげしく泣く。
そして「父親は他人の始まり。むやみに他人を信用してはならない
と教えるのだそうだ。人を無闇に信用しない子ができあがる。
3.金儲けのできん奴はアホで低脳や
今どき、平気でこんな発言ができる経営者がどれだけいるだろうか
「私に言わせるならば、頭さえ使えば、金の儲かることはゴロゴロ
ころがっている。儲かるネタはいくらでもある。ザクザクある。そ
れなのに金儲けのできないヤツは、アホで低脳で、救いがたいヤツ
である」
言いたい放題である。
4.週五日制で儲からない商売はやめてしまえ
向こう(ユダヤ人)が週五日働くなら、うちは六日働く、という考
えは間違っている。そんな考えでは絶対外国人相手に商売などでき
ない。五日働いてペイできないような商売ならサッサとやめた方が
賢明だという。
正鵠を射た指摘だが、これ、くどいようだが50年前の本である。
多少かび臭くなった箇所もあるが、それも含めて絶頂期の藤田イ
ムが伝わってきて興味深い一冊だ。