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劣後順位と優先順位

Rewrite:2014年3月23日(日)

出前の握り寿司がここにある。あなたは何の寿司から順に食べるだろうか?
私は、大好きな穴子と玉子を最後に残し、まずは白身あたりから手をつける。

ある経営者と出前寿司を食べたとき、私のそうした食べ方を見て忠告された。
「武沢さん、どうして好きな順に食べないの?嫌いな順に食べるとまず一番嫌いなもの、次に二番目に嫌いなもの、最後に一番嫌いではないものという順になる。それじゃ、いつまでたっても好きなものにありつけない。その点、私は好きな順に食べるので、いつも寿司おけの中の一番好きなものを食べることができる」

笑いながらの忠告だ。これは好みの問題なので、お互い罪のない話題である。

ところが、仕事の進め方となると笑っては済まされない。仕事は、目標設定と優先順位が大切であることはご存知の通りだが、「劣後順位」という視点があることを忘れてはならない。

劣後順位とは、優先順位の逆さの意味で使われる。手をつけてはならない仕事を決めておくのだ。寿司であれば、どちらから食べようともやがてはすべてを平らげる。しかし、仕事はたえず私たちの許容量を超えている。だからすべてをこなすことは出来ないのだ。

「社長としての私は、何をしてはならないか?」を決めよう。
ある勉強会で、この質問を投げかけた。参加者は各自、ノートにその回答を書き込んでいった。最初のうちは、集金や伝票発行、コンピュータ入力などの無難なものが並ぶ。やがて経営者は考える。「本当に自分でなければならない仕事は何か」と。

そうすると、今やっている仕事の大半が本来は劣後順位のリストに入れるべき項目であることがわかり始める。なかには屁(へ)理屈をいう人もいる。「集金は自分でなくてもやれるが、自分が行くことでお客の生の声も聞ける」とか「自分の手でコンピュータに営業マンの個人成績を入力することで、一人一人の活動状況が手にとるようにわかる」などの言い分である。

「劣後順位」という考え方は、経営者の仕事の仕方にとどまらず、社員の仕事術としても普及させたいアイデアである。また、経営計画書にも「劣後順位」の明記が必要だろう。以前拝見したある会社の経営計画書は、何と戦略課題として7項目、今期重点課題が5項目、部門別目標が39項目、合計51個の優先課題が記されていた。従業員数が1,000人くらいいればそれだけこなせるだろうが、社長を含めて14名の会社である。
まず目標を絞り込もう。少ないほど良い。次いで、会社として、社長としての「劣後順位」を明確にしよう。そうすることではじめて、優先順位の意味や価値がくっきりと浮かび上がってくるのだ。