Rewrite:2014年3月23日(日)
自らの修養に関する名著として『自分を鍛える』(ジョン・トッド著)がある。この作品では、自己管理に勝利し、やがて人生の勝者ともなった様々な人物が登場する。その中から面白い話をひとつご紹介しよう。
フランスのビュフォンという18世紀の博物学者がいる。彼は自分の著作活動を振り返って、次のように語っている。
「若い頃のわたしは、寝ることが大好きだった。そのため時間がずいぶん無駄にされた。しかし、召使いジョウゼフが一生懸命やってくれたおかげで、私は寝坊を克服できた。私はジョウゼフに、もし6時に起こしてくれれば、そのつどクラウン銀貨を一枚やろうと約束した。翌朝、彼は私を起こそうとしてさんざん私を苦しめてくれたが、そのお返しに彼が受け取ったものは、私のののしりだけだった。次の日も同じようにやってくれたがうまくいかなかった。私としては結局、また時間を無駄にしてしまったと昼になって思い知るはめになったわけだ。
(中略)
やがて、私はやむなく彼にしたがい、彼のほうは、私が起きる時にあびせかけるののしりの代わりに、毎日一時間後には、感謝の言葉とクラウン銀貨によって報われたのである。そう、私の著書のうち10ないし12冊は、気の毒なジョウゼフのおかげで出来上がったのだ」
さすがに経営者には、朝寝坊で遅刻するような方はいない。しかし、自らの体験を踏まえて、若者に対して生活習慣を改善することの重要性を説く義務があるだろう。学ぶことも考えることも夜明け前の家人が寝静まっているときが最高だ。
このテーマは私生活の自己管理の問題なので、最終的には本人の自覚にゆだねられてしまう。ゆえに関与の仕方が甘くなる。私もある会合で私は毎朝○時起きしていると言ったら、思わぬ言葉が返ってきた。
「武沢さん、健康第一だからそんな無理したらあかん。あなたもいい歳なんだから。それに、そんなに早く起きても散歩するくらいしかやることないでしょうが」
私はそれ以上、何も申し上げる気にはなれず笑ってすませた。志あるものにとって、早朝にすべきことは山ほどあるはずなのだが。