昨日のつづき。
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俺は肇(はじめ)。
相場で失敗した母と俺たち9人兄弟は、借金取りから逃げるために
そして俺はひとりで大坂に来た。
日雇い労働者をやったあと
ある日、酒場で知り合った「太郎御仁」(たろうごじん)の家に
声も顔も海で
その日は太郎御仁は俺たちのために粥を用意してくれた。
まだ煮えていないので、先に酒を酌み交わすことにした。
ところが
いったいどれほど眠ったのだろうか。
あれから何年かが過ぎていた。
目が覚めると、俺は自分の家の居間にいた。
嫁の幸子がつくって
義理の父として
日本中が住宅難ということもあり、
「幸子、行ってくるね」
「あなた、気をつけて。今日は遅くなるのかしら?」
「そうだね、今日は赤坂の料亭で自民党の田中幹事長と打ち合わせ
「田中幹事長はウイスキーがお好きですからね。きっと銀座か赤坂
「そうだな。だけどお前ほど悪い女はいない」
「まあ、人聞きのわるい」
幸子とは銀座のクラブで出会っていた。
幹事長がキューピット役で
社用車のリンカーンで会社に向かう。
車中ではいつも新聞を読む
後部座席で目を閉じると、あの日のことが思
太郎御仁のバラックではじめて長谷川の親父にあったあの日のこと
「お前、夢はあるのか」と聞いてきた親父。夢なんか一度もみた
「日本のトップに立つ」と。
親父は「何のトップだ?」と聞いた。
俺は訳もわからずに「トップの中のトップだ」と言ってやった。
「だったら政治をやれ。その前に俺の会社で働いて力をつけろ。そ
親父がいくら払ってくれたのかわからないが、組員時代のアニキた
「いつでも俺たちをつかってくれ」と言っていたが、できるものな
「あの日の出会いがなければ俺は今ごろどこで何をしていただろう
「社長、社に到着しました」
「ごくろう」
話を端折るが、それから20年経った。
すでに長谷川の親父は亡くなった。
俺も「長谷川工務店」の経営を
自民党所属の国
異例の出世と党内でささやかれ、「田中総理の懐刀」などとも言わ
「あなた、私も総理夫人と呼ばれる日が来るのね」
「どうしてそんなことを聞く?」
家では仕事の話題を嫌う肇。俗世間にうとい幸子がそんなことを聞
「だって、さっきのテレビ番組であなたのことを特集していたから
その翌月、田中総理が逮捕された。アメリカの大手航空機会社か
田中総理の政治生命は絶たれた
「礼状が出ています」
身に覚えがないのに、肇の家にも連日、検察や警察の捜査が入りだ
<明日決着>
※これは、あるメッセージをお伝えするためのフィクションです。