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危機だけ社長、夢だけ社長

部下管理がうまい社長は、社内に危機感を持たせるのがうまいが、時と場合によってはそれがアダになることもある。
会社説明会などで学生を相手に危機感を訴える社長がいる。
前途洋々たる若者にはまず夢を語り、自社で働くことの誇りを語るべきであろう。

新入社員教育でも同様のミスを犯す会社がある。
社長や役員が延々と危機感を語る。
その結果、新入社員は「ミスしてはならない」と息苦しくなって笑顔が消える。

このままでは「危機だけ社長」だ。
反対に夢しか語らない社長は「夢だけ社長」になる。

あるとき学生相手に危機感を訴える社長がいたので、私がそれを指摘すると、憤慨した表情で社長がこう言った。
「武沢さん、どうせ会社に入ったら否が応でも危機感を持ってもらうことになる。入社してギャップを感じて辞めてしまうくらいなら、最初から厳しい現実を語っておいたほうがよい」

「ほぉ、入社したら危機感をもってもらうのですか?」と言いながら私は立ち上がり、ホワイトボードにこう書いた。

・・・
幹部社員:危機感__%、誇り__%、夢__%
一般社員:危機感__%、誇り__%、夢__%
新入社員:危機感__%、誇り__%、夢__%
・・・

「__に数字を入れて合計で100%になるようにしてください」

社長は私のメッセージに気づいたのか「なるほど」と言いながら、こんな数字を書き入れた。

幹部社員:危機感 90 %、誇り 10 %、夢 0 %
一般社員:危機感 60 %、誇り 10 %、夢 30 %
新入社員:危機感 30 %、誇り 20 %、夢 50 %

当たらずといえども遠からずだったが、私が思っている数字も書いてみた。

幹部社員:危機感 70 %、誇り 20 %、夢 10 %
一般社員:危機感 40 %、誇り 20 %、夢 40 %
新入社員:危機感 20 %、誇り 20 %、夢 60 %

 

社員にもってもらうのは「危機感」だけではない。「誇り」も「夢」も必要だ。
「危機感をもて」「誇りをもて」「夢をもて」と語るだけではなく、具体的に例をあげて語ろう。

危機感をもってもらうためのトーク、誇りをもってもらうためのトーク、夢をもってもらうためのトーク、この三つを「幹部用」「一般社員用」「新入社員用」とそれぞれもてば9パターンのトーク台本ができる。
それをたえずメンテナンスしている社長はいつでもどこでも適切なスピーチができるようになる。

社員用にブログやメルマガを書いている社長は、「危機感」「誇り」「夢」というキーワードをローテーションさせるだけでもネタが思いつきやすくなるはずだ。