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慎独・怠独・寝独・乱独・・・

江戸時代、優秀な若者の多くが私塾で学んだ。本がいまの何倍もの貴重品だったこの当時、私塾には図書館の役割があった。おのずと私塾での勉強は読書が中心になる。
私塾の読書法には「慎独」(しんどく)と「掩巻」(えんかん)があった。

「慎独」とは、読んだことを他人にも話し、内容をシェアしなさいという教え。
もうひとつの「掩巻」は、書物を少し読んだら、いったんそれを伏せて内容を味わいなさいという教え。

本好きは「慎独」と「掩巻」を無意識に行っている。私の場合、読んで感銘を受けた本は必ずメルマガに書くし、セミナーなどでも話す。
そうすることで二度・三度読んだのと同じぐらい内容が定着する。
また一冊の本を一気に読み通すようなことはあまりしない。中味が充実した本であればあるほど内容を味わいながらじっくり読むのが好きだ。

ところで、「慎独」という言葉にはもうひとつ別の意味がある。
中国古典『大学』『中庸』にある教えで、「人のいないところでも身を慎み、人倫の道を守っていくこと」をいう。当時、人の上に立つ指導者や専門家に必要な個人修養の徳目として大切にされた。

「西郷南洲遺訓」にも南州(西郷隆盛)と弟子のこんな問答が載っている。

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弟子:至誠が大切だとおっしゃいますが、普段どのようにこれを養えばよいのでしょうか?

南州:至誠を養おうとするなら、まず「慎独」ということに気を付けていくことだ。独りでいるときにわがままで怠惰な生活にならないようにすること、これが慎独だ。ここが善悪の分かれるところであり、重要なところである。よくよく気をつけるように。
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誰かと一緒にいるときも一人のときもまったく変わらずやるべきことをやれる人が「慎独」。
ひとりになったとたんにサボる、怠ける人は「怠独」(たいどく)
すぐ寝ちゃう人は「寝独」(しんどく)。
気分がだらけて乱れる人は「乱独」(らんどく)というのだろうか。