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成功体験の功罪

Rewrite:2014年3月22日(土)

ローマ帝国がそうであったように、組織は外圧に屈するよりも内部から崩壊するものであるといわれる。

そのこと自体に異論はないが、その内部崩壊はなぜ起こるのか、というメカニズムを知りたいものだ。
そこで、ひとつの仮説としてこんなことを考えてみた。

組織には主流と傍流のふたつがある。当然、主流派の社員と傍流派の社員もいることになる。この二つはどのように生まれたかといえば、それは「過去の成功体験」である。人間はひとつのことで成功すると、次もそれをくり返したくなる。良く表現すれば「勝ちパターンの確立」、悪くいえば「成功体験への埋没」ということになる。
この習性は、個人だけでなく組織全体、会社全体にもあてはまる。むしろ組織全体のほうが成功体験に溺れやすいかもしれない。

ある事業の立ち上げで成功すると、そのリーダーやメンバーは組織の中で脚光を浴び、主流派となる。担当者は出世し、実権を握る。あとから入社した新人も、有能な人材がこの部門に集中する。経理や財務もこの部門の意向を尊重する。こうして組織全体は、成功体験をくり返す方向に加速度をつけ始める。運が良ければこの部門は10年~20年にわたって会社全体を牽引する。しかし現在では、ひとつの勝ちパターンの耐用年数が急速に短くなっているのだ。

日本の中小企業経営者は、過去においていくつかの成功体験をしてきた。しかし、それが今後も通用するものとは限らない。もし続くと思っていたとするなら、その会社は危険信号が点っていると考えるべきだろう。

1.景気は必ず循環する。今は不景気でも、経費をおさえてしのいでゆけば、やがて好景気がやってくる。
2.取引実績が長く、太いパイプで結ばれた銀行との取引はこれからも続く。
3.誠意と情熱をもってお客を訪問すれば、必ず受注できるはずだ。念ずれば花開くというではないか。

過去の成功体験に埋没しないための対策を幾つか。

1.積極的な権限委譲・・・若手幹部に権限を委譲する理由は、能力があるからではなく、過去の成功体験を知らないからである。
2.勝ちパターンを常に複数作るか、自らの勝ちパターンを自らが定期的に破壊する。
3.車検が3年に一度あるように、事業と組織の大改革も3年に一度は行う。
4.経営計画のチェックと修正を四半期単位で行い、管理サイクルのピッチを縮める。

大企業病とは組織の官僚化を意味するが、中小企業病というものがあるとすれば、それは成功体験への埋没を意味する。新たな成功パターンを作ることが大切であるように、過去の成功体験を取り除く自浄作用もあわせもたなければならないのだ。