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パーティ主催は重要な営業戦略

鮎の友釣りが大好きで、友だちを集めたパーティでは自宅の庭に川を作り、鮎を放流して釣りをさせたという本田宗一郎(ホンダ創業者)。
都心の邸宅に、故郷の静岡・天竜川から取り寄せた鮎を放流するとは、いかにも贅を尽くしたもてなしである。

こうした本田流のもてなしに、パーティ経験豊富な政財界の大物や外国人も大喜びしたという。そればかりか、本田のパーティは有名になり、「私も出席したい」と人の輪が広がっていった。これも本田流の人脈形成術といえるかもしれない。

人脈が命の営業マン。知人の凄腕保険セールスマンの Y 氏は本田のパーティを知っているのかどうか。小型版の本田式パーティを開いて営業成績にむすびつけているのだ。

氏は数年前、優秀成績者だけが参加できるハワイ会議に招待された。
大いに刺激を受けて日本に戻ると、さっそく「御礼報告会」を企画した。こうして成績を上げられるようになったのも、お客さんに恵まれたおかげ。少しでもお返しできれば、とY 氏は人気のステーキレストランを貸し切り、重要クライアント50名を招待した。そこで豪華なステーキコース料理にワインを振る舞ったのだ。

Y 氏夫妻は席をあたためる間もなく挨拶をしてまわった。食後の交流会では名刺交換と交流が活発に行われ、当初予定していたビンゴゲームとマジックショータイムは急きょ中止するほどのにぎわいだった。
その日、手土産を加えると250万円ほどの出費があった。

この「御礼報告会」で Y 氏はすぐに決断した。
「毎年やる!」と。
しかも一人につき一人の招待枠をつくった。その結果、翌年は80名になった。さらにその翌年は100名超になった。出費額は年々かさんでいったが、驚く結果が待っていた。

営業成績が3年で3倍になったのだ。

「ご招待なんだぜ」「楽しいよ」「すっごく美味しい」「すごい人がたくさん来る」「Y 氏は桁違いのセールスマンだ」「君も会ってみるといい」・・・。

そんな口コミが広がり、規模はますます大きくなる一方だ。

「お客さんを紹介してください」と一度も言っていないのに、Y 氏は会社で一番の紹介獲得数を誇るようになった。

Y 氏は 今後の抱負を語る。

「人は同じことを経験するとすぐに飽きます。来年のことは何も決まっていませんが、毎回少しずつ ”おやっ!” ”あれっ?”と思っていただく意外性を盛り込むつもりです」

まさかレストランで鮎釣りを体験させるわけにはいかないだろうが、本田宗一郎氏のように、主催者自身が心から楽しめる時間にすることが大切なもてなしの要素かもしれない。