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N 社の経営計画発表会 in 京都にて

6月26日(月)午後5時、京都市内のホテルに N 社の社員約20名が勢揃いした。第9期経営計画発表会がまもなく始まろうとしている。
この時期、蒸し暑い京都。私は10分ほど前にホテルに到着したばかりなので、まだ汗がひいていない。そんな私以上に汗をかいていたのは司会の H 部長。ふだん、とてもユーモラスで笑顔が絶えないのに、緊張の面持ちで汗をふきふき進行表を確認している。

T 社長の会釈を確認し、H 部長は「それではこれより・・・」と、第一声を発しようとした。
だが緊張のあまり、「それではこれをもちまして・・・」と言ってしまった。これで終わるのかと思ったがあわてて言い直した H 部長。
その直後、「H 課長より開会宣言」というべきところを「H 課長より閉会宣言」と言ってしまい、すぐに気づいて訂正していた。

こうしたぎこちない空気で始った N 社の経営計画発表会だが、たしかに今年は特別な意味をもつ発表会なのだろう。
2年前にも京都で発表会を開催している N 社だが、そのときより社員も年商も5倍に増えた。しかもこの春に入社した新入社員が10名もいる。ある意味、第2創業に近い決心で今回の発表会に臨んだ N 社の幹部たち。

29歳の T 社長が登壇した。まず、日ごろの労をねぎらった。そして五つある部門ごとの優秀社員賞を発表・表彰した。その後、今期目標、今期最重要テーマ、五年後の会社像などを熱く語った T 社長。次いで登壇した M 部長が経営理念、経営方針、部門別方針を語った。さらに H 課長が登壇し、チーム別方針や内部管理に関する方針を解説。
社員決意表明のあと、私も講評させていただいた。

「会社ってたった二年でここまで変わるものか」というのが私の率直な気持ちである。以前は会社批判、社長批判する社員がいた。社長もそうした社員を痛烈に批判した。いま同社には会社や仲間の悪口・陰口をいう社員はひとりもいない。もちろん、会社なので問題はある。
N 社の場合は急成長中なので、尚更「成長痛」がひどい。ただ、何が問題なのか、それは何が原因なのかを特定できるようになってきた。
それが2年前との大きな違いである。

いま N 社の社員は、夜遅くまでハードに働く。それでも5年後には残業ゼロの会社を目指し、その仕組み構築に全力をあげている。
いままで N 社の社員はよく辞めた。だが、いまでは全員が定年まで働く会社を目指し「社員満足第一主義」を会社の経営方針に掲げた。
いままで N 社は、顧客満足度が高いとはいえず、苦情や解約がしばしばあった。特にそうなりやすい事業部門があり、その部門は同社の創業時からの中核部門だった。だが「同業者のなかで圧倒的顧客満足首位」をめざし始めた同社は、その事業部門ごと廃止する意思決定をした。それによって売り上げの何割かを失うことになるが理念や方針に忠実になるためにそうした。

そうした方針を来賓席で聞いていて、「何たる勇気ある会社なんだ」と舌を巻いた。来賓として冒頭にすこし挨拶するだけの予定だったが、あえて閉会直前に挙手し、司会に発言を求めて講評を述べさせていただいた。数分のスピーチだったと思うが、要するに「皆さん、いい会社に入ったね。胸を張れる立派な経営計画書ですよ」ということを申し上げたかった次第。

懇親会で隣り合わせた女性新入社員に感想を聞くと、「この会社に入りたいと思った昨年の自分の考えがやっぱり正しかったのだと思いました」とのこと。多忙な日々に忙殺されて忘れかけていた入社動機。
それを思い出したのだろう。今後は何度も何度もそれを思い返していただきたい。

二日目の今日は社員全員で京都見物を楽しむ日。社員旅行プロジェクトの企画で嵐山で和菓子づくり体験などを予定しているそうだが、私は朝食後、幹部に見送られてホテルを出発した。