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社長の給料

Rewrite:2014年3月21日(金)

「社員に対して、経理内容を公開すべきか否か?」という質問を受けることがある。もとより、公明正大な経理内容の会社には、こうした質問はないのだが、どうやら、質問の会社は公明正大ではない何かがあるようだ。
どうして、かような質問をするのか不思議に思って聞いてみると、原因は三つほど考えられる。
一つは、親族も含めた役員の給料が高すぎるのではないか、という自覚がある場合。二つめには、なにがしかの公私混同が発覚するのではないかという恐れ。三つめにはほかの社員の給料が知られたくないという危惧である。

社員の給料は賃金規定などによって基準がはっきりしているし、世間相場との比較も簡単だ。しかし、役員報酬に世間相場はなく、報酬規定を定めていない会社も多い。したがって、社長が社員の何倍もの給料をとっていることに罪悪感を感じてしまうのだろう。
そうした中、私はあえて、”役員報酬の基準を設けよう”と申し上げてきた。一番ふさわしいのは、粗利益に占める役員報酬の割合を決めることである。企業規模が小さい会社や、私のような個人事務所の場合、この数字が極端に大きくなる。したがって、この値の大小を他社と比べても意味はない。過去3年間の値を計算してみることだ。すると、ある一定の範囲に収まっていることがわかる。

さらに、今後3年間の粗利益目標を予想し、係数をかけてみるとおおむねの役員報酬額がわかる。順調に粗利益が伸びていけば、役員報酬も年々増やすことができる。業績不振におちいれば、まっさきに役員報酬をカットする。もしくは役員を減らすことも検討する。仮に、役員報酬額が現実ばなれするほど大きくなれば、係数を下げても良いし、役員の人数を増やすことも可能となる。

このように曖昧模糊とした役員報酬にも、何らかの基準をもうけることが大切なのだ。くれぐれも金額で判断してはいけない。金額は主観にすぎない。
たとえば、「月額100万円もらっているから、当分上げないでいこう」とか、「家を買ったから給料を増やそう」などと考えること自体が公私混同の始まりだ。

日本の企業経営者は欧米にくらべて役員報酬が少ない。それも、けた違いに少ない。同様に、経営責任のとりかたについても認識が乏しい。成果主義型の賃金制度は、決して従業員だけのものでなく、役員にも必要なのである。