役員には幅広い経験や知識が必要となる。社長という立場にあれば勉強や体験の機会に恵まれているが、ナンバー2以下は担当実務中心にならざるを得ず、自然に経営者として成長するということは少ない。
計画的かつ体系的に役員として育てていく必要がある。
昨日ご紹介したA社のB専務の場合もそうだ。営業の実務だけに明け暮れて20年、B専務はバランスのとれた役員として成長することはなかった。
A社長の経営者育成努力にも改善すべき点はあるが、あくまでB専務とは友人であり、パートナーだと思ってきた。従って部下育成という視点をB専務に対しては持っていなかったのであろう。
こうしたケースは中小企業では珍しくはない。
さて、私が考える役員の条件とは
1.先天的に持っているべきもの
・熱意や意欲
・勉強好き
・無理がきく体力があること
・明るくプラス発想できること
2.後天的に開発すべきもの
・経営的知識
・遵法精神
・コミュニケーション力
・役員としての自覚
役員として、幹部社員とは異なる自覚が求められる。それは、会社全体の結果責任を負うという自覚である。
大切なのでもう一度言う。
役員は会社全体の結果に責任を負う人である。決して部門業績だけが責任範疇ではない。
B専務にはこの大切な、役員としての自覚やバランス感覚、それにリーダーシップが欠落していた。
従って、社長としては一年後の任期切れを待ってB専務を役員から外す決意を固めたのであろう。
役員を解任する方法は三種類ある。
・本人からの申し出による「辞任」
・任期満了(普通は二年間)
・株主総会の決議で役員を辞めてもらう「解任」
任期中の役員を「辞任」するということは、自らの能力の足りなさを認めることでもあり、退職する場合を除いては難しい。
「解任」も同様に力ずくでの行為なので出来れば避けたい。一番自然なのは、このA社のように「任期満了」をもって退任してもらうことである。しかも事前に猶予期間を与えての満了なので、優しい処遇だ。
退任したB専務はその後どうなるか?
それは今のところ誰にもわからない。考えられる選択肢は、
・会社を辞めて株主としてA社と関係を残す
・会社を辞め、持ち株も売却する
・特定部門の執行役員として社内に残る
・社員として社内に残る
・その他
1対1でお話ししたことはないが、きっとB専務は「なぜだ!」という気持ちがあるのではないだろうか。
社長と一緒に会社を作ったメンバーなのに、どうして自分が役員から外されなければいけないのか納得できていないはずだ。
しかし、役員とは本来そういう立場なのだ。設立メンバーだからとか、株主だからということは関係ない。
A社長はB専務が任期満了にともなって退任する場合に備え、役員退職金を支払う準備も済ませた。B専務のふんばりに期待したい。