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ローンチの不発、そして責任者会議にて

<昨日の続きはあすにします>

(実話ベースフィクション)
あるネット支援会社がこの春、鳴り物入りでローンチ(新発売)した新サービス「スマホ通販お委せパック」(仮称)がまったく売れない。
平均単価30万円のサービス。4月以降毎月30件の見込客獲得が目標で、そこから半数の15件(450万円/月)を受注につなげる計画だったが、実績はその1~2割程度しかない。

半年経過後の責任者会議には、このプロジェクトのリーダーであるC 部長と A 社長、B 専務の三人があつまった。

まず C 部長に発言が求められた。
「はっきりいって想定外の惨敗です。たくさんの実験をしてうまくいったものだけを残せといいますが、このサービスはうまくいかなかった方の実験だったかもしれません。責任を取れとおっしゃれば、取るつもりでいます。この事業からは撤退を検討すべきだと考えます」

「おい、待てよ。早々の白旗かい。まったく違うだろう」と B 専務。
かなり怒りの表情である。

「販売成績という面ではたしかに失望するばかりだが、君が責任をとるためには、まず経営計画の見直しのための新・販売計画をつくることだろう。そもそも君の肝いりで始めた事業じゃないか。たった半年で、よくも撤退などという言葉を臆面もなく言えるものだな。部下を戦地に残してリーダーが敵前逃亡か?」

「いえ、そんなつもりは・・・。ただ予想以上に厳しいものですから」

「この半年のマーケティングが生ぬるいからこうなるんだ。どんな販促活動をしてきたのだ」と詰めよる専務。

「はい、まず販促カタログを3月につくり4月のホームページ完成以降は毎月広告代理店に月額50万の広告予算を渡して・・・」

「分かってるよ。C 君、もういい」と A 社長が口を開いた。そしてこう続けた。

「誰の肝いりだろうと経営会議で決定したことは経営陣の責任だ。君に責任をとらせるつもりはない。しかも、スマホビジネス支援というサービスは市場性も豊かだし、当社の強みが活かせる分野だと期待している。この分野に注力するという基本方針は変えるつもりはない。ただ、今回のサービスに対してはすぐに過大な期待をしていたのかもしれない。販売目標が無謀だった可能性もあると思うが、どうだろう」

下をむいたまま黙りこむ C 部長に対して、専務が割り込んだ。

「事業がダメなのか、商品(サービス)がダメなのか、やり方がダメなのか、というやつですね」
社長はニコッと笑い、「そうだよ、専務。スマホ分野に注力するという方針は変わらない。その部分に関しては一喜一憂せずやり続けねばならん。だけどサービス内容や、マーケティング活動、予算などについては状況に応じて柔軟であるべきだと思っている。だから今日の会議では、新しい C 君の計画が聞けると楽しみにしていたのだよ」

「このまま事業を続けてもよろしいのですか?」と C部長。
「ああ、もちろんだよ」と A 社長。
専務が釘を刺した。
「だけど部長、経費予算は見直しが必要だぞ。早急に新販売計画をつくりあげてくれ。デッドラインは月末の経営会議だ」

「わかりました」と C。

社長が締めくくった。
「C 君、くれぐれも半年前の君の情熱を忘れてはいけないよ。事業っていうのはそもそもが、迷路のように壁にぶつかりながら出口を見つける活動を言うのだから。最初から思った通りになることの方が稀なんだよ」