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ベゾスの経営姿勢は Amazon ジャパンでどうか

Amazon の創業者 ジェフ・ベゾスの本を読んで氏についてほとんど何も知らずにいたことに気づいた。もっと高く評価されてもよい経営者だと思う。あるいは、すでに充分評価されているのかもしれないが、今後ますます目が離せない世界的経営者の一人であることに対しては誰も異論がなかろう。

ベゾスは「お客さんが言ってきたことはどんなことであれ、その根幹にある理由を突き止めるべく、すべての顧客サービス情報を動員する」と述べている。
「クレーム発生」→「クレーム処理対応」→「クレーム処理完了」→「やれやれ」、というよくあるルーティーンに終わらせないぞ、というトップの決意表明である。

顧客から持ち込まれたマイナス情報を、クレーム処理して再発防止するだけではダメだというのだ。むしろそのクレームを今後の自社の強みにしていこうという氏の事業欲に通じるほど貪欲な顧客満足欲がうかがえる。

たとえば、汚れた本が届いたというクレームが起きたとしよう。何が問題か。出版社なのか、仕入れ部門なのか、倉庫管理なのか配送部門なのか、それ以外の何かか。
すべての部門において商品の汚れが発生しない(仮に発生しても消費者に届くまでのあいだに解決される)仕組みをつくる。そうすれば、胸を張って「汚れた商品をお客さまに届けることはありません」と宣言できる。
本を汚した犯人を探しだして、その犯人にペナルティを与えるだけでは再発防止とは言えないのだ。

ベゾスというと果てることのない事業欲の持ち主というイメージをもっていた私は、デリケートで緻密で、地道といえるほどの企業努力を惜しまない経営姿勢にちょとした意外さを感じた。こんな一面にも氏の姿勢がつよく出ている。

Amazonで働く管理職は数千人に及ぶそうだが、その全員に毎年2日間、コールセンター勤務を課している。顧客のクチコミひとつで、一瞬にして世界が変わってしまうことを知っているベゾスは、コールセンターにおける顧客対応にも心血を注いでいるのだ。

お客は商品やサービスの問題以外に、企業がどんな対応を見せるかを重視する。それによって、商品の欠陥があったとしてもかえって評価が高まることもあれば、大炎上に発展する危険性もある。その鍵をにぎるのがカスタマーサービス部門だというのだ。

「じゃあ、試してみよう」と私は、さきほど Amazon ジャパンのホームページからカスタマーサービス部門に連絡を入れてみた。
トップページの一番右下にそのメニューがある。
8月に購入したばかりの妻用の Kindle が読書中に勝手にリセット動作が始まる。しかも毎日数回それがあるらしいが、いままで我慢して使ってきたのだった。

電話は出ない。フォームからの返信にも時間がかかる。そんなイメージがネット企業のカスタマーサービス部門にある。
だが、Amazon のカスタマーサービスは全く違っていた。Amazon サイトにログインし、苦情を言いたい商品を購入履歴から選ぶ。
次に「電話を希望」というボタンを押すと、「今すぐ電話ほしい」「5分後くらいに欲しい」というメニューがあらわれる。
自分の携帯番号を入力して「今すぐ」をプッシュしたその瞬間、私の携帯が鳴ったときには早すぎて驚いた。

「はい、武沢です」と出ると、機械音で「この会話はサービスの品質向上のために録音されます」とアナウンスされ、その直後にオペレーターがあらわれた。電話代は Amazon 持ち、ということだ。

Kindleの不具合について私の主張を聞いたうえで、いくつかの対応策を教えてくえた。しかしそれらすべては実施済みだった。「では、これがおそらく最終の手段になります。これでも改善しないときには端末不良が原因と考えられますので、そのときにはご面倒でもお取り替えになりますが、よろしいでしょうか」ということだった。申し分ない対応である。なにより今すぐ、私の訴えを受けとめてくれたことに感謝したい。ベゾスはウソを言っていない。

<明日につづく>