「のぞくな」と書いてある穴はのぞきたくなるように、「読むな」と言われた本は読みたくなるし、「観るな」といわれた映画は観たくなる。人間は天の邪鬼にできている。
英国の『チャタレイ夫人の恋人』がわいせつ本であるとして有罪が確定し、発行禁止処分になったのは戦後間もないころ。すでに出回った本を当時の大人や学生は回し読みした。今年の予算委員会で麻生大臣もチャタレイ本を回し読みしていたことを告白したが、人は禁書扱いされた本は読みたくなる。
反対に「読め」と強制された本はその時点で興ざめになる。たとえば学校でつかう教科書に載っている文学作品とその作者は、自分のおこづかいで書いたいとは思わなくなるから不思議なものだ。
最近の作家では、吉本ばななや村上春樹が教科書に載っているそうなので、やがて人気が失せていくのではないかとみている。
村上春樹に関してはノーベル賞関連なので、もう一回ブームがくる可能性はあるが・・・。
戦後間もなくは、黒塗り教科書で授業が進められた。新しい教科書ができるまでの間、やむなく戦時中のものを使ったわけだが、不適切と判断されたところは墨で黒く塗った。なかには全ページ真っ黒になるものもあったというが、当時の子どもは、先生に指示されて自分で消した。あとから読めるようにわざと薄く消す子どももいて、先生はそのチェックもしたらしい。
→ http://matome.naver.jp/odai/2137616053651198601
→ http://www.geocities.jp/yasuko8787/bokumetu.htm
キリスト教(カトリック教会)は信者が読んではいけない本を禁書目録として1966年まで毎年公開してきた。『不思議の国のアリス』
『ダ・ヴィンチ・コード』などの小説のほか、ガリレオの地動説も教義に反することから禁書扱いを受けてきた。
→ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%81%E6%9B%B8%E4%B8%80%E8%A6%A7
この禁書目録に載ることで、いままで知らなかった本なのにこっそり買って読もうとする信者がいたに違いない。
現代のように、いつでもどこでも手軽に読めるようにするということは、かえって読まない口実を与えることになる。本に関していえば、入手が不便なぐらいでちょうど良いのかもしれない。
いっそのこと、「経営計画書」「業務マニュアル」を禁書扱いしてみたくなる。