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活路を見いだす

Rewrite:2014年3月21日(金)

「事業はゴーイングコンサーン」という言葉がある。継続発展させなければならない、という意味で使われる。その精神は大切だが、なにがなんでも存続させることばかりが第一だと考えると保守的になりすぎてかえって寿命を縮めることになる。

ネット通販最大手の「楽天市場」は、97年2月に会社設立、97年5月に13社の加盟店をかかえてサービスを開始した。これ以前に、インターネットを使ったショッピングモールは、デパートや商社、それに証券会社まで参入したが、軒並み失敗に終わっていた。そんな中での会社設立であり、周囲は皆、反対し批判した。だが、三木谷社長をはじめ設立メンバーだけが「やれる」と思っていたという。

まず、三木谷氏はこの当時3,000店ほどあったショッピングサイトをすべて見た。大変苦痛な作業だったそうだ。その結果、なんと2,900店は過去3ヶ月間で一度も内容が更新されていないことがわかった。そして大手のショッピングサイトに加盟するには高額な費用が必要で、内容の更新手続きも面倒くさかった。楽天はこうした失敗事例をもとに前例のないショッピングサイト作りに着手する。

アイデアはあっても最初のハードルは技術の問題だ。紙に書いたプランをコンピュータで実現するには技術がいる。そこで与えられた選択肢は3つ。

1.外注する
2.技術をもった会社を買収する
3.自分たちで技術を勉強してソフトを作る

三木谷氏はためらいなく「3」を選んだ。核になる技術は時間がかかっても内製化すべきと判断したのだ。1日10万円で家庭教師を雇い、前例のないショッピングモール作りにとりかかる。それは96年暮れのことだ。会社設立の3ヶ月ほど前の決断であった。

その後の楽天の成功は、称賛に値するが決して奇跡でも偶然でもない。三木谷氏には3つの仮説があった。

1.インターネットは爆発的に普及する
2.インターネットでものが売れる
3.情報が新しく価値があればアクセスが集まる

この3つの仮説にすべてを賭けた。この目論見がはずれれば、赤字どころか会社自体がなくなってしまう。
経営資源をある一点に集中させることによって始めてベンチャーは大手に勝てる可能性が高まる。ゴーイングコンサーンを第一に考えていたら、こんな危ない挑戦はできるものでない。

これはベンチャーに限った話ではない。中小企業も自営業者も個人事業主も、限りある経営資源を集中させてこそ活路が開けることが多い。あなたは何にお金や時間を集中投下するおつもりか。