企業のネット化を推進する上で、経営者はネットセンスやネット感性なるものを理解しておく必要ある。それは、現実のビジネスとは異なる特有のセンス・感性であり、過去に用いてきた人事評価表のいずれにも該当しない評価基準があるのだ。そうしたセンス・感性を、今いる社員が持っているとは限らない。
和菓子の製造直販を営むQ社長がネット対応に手こずっているのも、そんな理由だ。
Q社長の会社は、白あんを使ったモナカや大福餅が人気。先代が会社を興して30年、蓄積してきた顧客名簿は1万人を超える。郵便やFAXでのDMを、徐々にメールに切り替え、ホームページで注文をとる形に切り替えていく作戦だ。Q社長が、そうした構想を打ち出してから早1年を経過するが、一向に進展していない。
「なぜだろう?」
Qさんと私は酒を酌み交わしながら率直に議論し、いくつかの結論を導きだした。それはこうだ。
結論1:社内にいる人材の中から、「ちょっとネットに詳しいヤツ」という理由だけで彼をネット推進部門のリーダーに据えては ならない。
補足1:ネットに詳しいというのが一番あやしい。詳しくあってほしいのは知識ではなく、ネット化を推進する上での経験や実力なのである。中途半端な詳しさでは、かえって社長の前で知識を披瀝するばかりで終始し、有害になることも多い。むしろ、社長みずからがネット化の推進リーダーをやるべきであり、ネットに詳しいという理由だけで彼を推進メンバーに入れることは大いに危険だ。プロジェクトメンバーに求められる能力は、仕事を前へ推進させる力や情熱なのだ。
結論2:ネット化のすべてを内製しようとしてはならない。
補足2:内製している時間的余裕はないはず。それにも増して、専門的な技術や知識、事例や経験の有無に関しては、社員と雲泥 の差があるのが専門家。人材の有効活用と称して、社員だけでサイト構築からメールマーケティングのすべてをやろうと するのは誤りであり、徒労に終わることが多い。
結論3:サイト更新をすべて部下に任せようとしてはならない。
補足3:サイトは更新が命だ。更新の頻度や更新された情報がおもしろければ、“お気に入り”にいれてもらえる。すべてのページ を部下が更新するのは第二段階であり、最初の段階では、社長みずからが更新するページが幾つかあるべきだ。この段階 を手抜きしては、うまくいかない。
結論4:社長みずからインターネット雑誌を定期的に購読し、最新サイト情報に目を光らせるべきである。
補足4:インターネットに関する雑誌を買ったことも見たこともない社長になってはならない。ホームページやメールを使ったマ ーケティングは時々刻々と進化している。一年前の知識や情報・事例はすでに時代遅れになっている可能性が高い。
最終結論:ネット化の鍵をにぎるのは社長自身だ。
社長がネット化に関して適切な方針を示し、外部の専門家に適切な発注ができ、部下に対して適切な指示ができる能力が問われる。
そうした能力は、上記結論1~4で養えるというのが私の主張である。大企業には当てはまらない部分もあるだろうが、中小企業や個人企業では立派に通用するはずだ。あなたはどうお思いになるだろうか。
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