Rewrite:2014年3月21日(金)
「うちも若返りが必要だから3年以内に息子へのバトンタッチを考えている」という経営者にお会いした。聞くと、まだ52才だそうだ。息子の年令がではなく、その社長が52才なのだ。
まだこれから円熟するはずの経営者が、早くも世代交代を考えるのには、積極的な理由による場合と消極的なそれとがある。
積極的な理由とは、後継者に任せた方が経営はうまくいくと信じていて、ご自分も他にやりたいことがある場合。消極的な理由とは、疲れたとか、飽きたという社長自身の情熱喪失だ。
ここで問題にしたいのは、消極的な理由だ。引退するときは誰にもやってくる。その瞬間まで、社長は社内でだれよりも情熱の持ち主であってほしい。にもかかわらず情熱喪失に陥るのはなぜだろうか?
先行きが読めないとか、勘が働かなくなったとか、肉体が衰えたとか、いかようにも理由は見つかるだろう。しかし、そうした表向きの理由の裏にあるもの、それは夢がなくなっているのではないか。夢がなくなると気力も衰えるのだ。
「オレの出番はもう終わったのか」などと思うのは早計のいたりだ。老けこむにしてはあまりに若すぎる。
日本初の地図制作者として有名な伊能忠敬は、養子先の家業再建のために50才まの時を費やした。人生50年時代の50才だから、今でいえば70才を越えていた感覚だ。それから、彼は20才も年下の若い天文学者の門を叩く。そして測量術を学び、幕府の許可を得て地図制作を開始したのだ。
それから73年間の生涯を閉じるまで忠敬は日本中をくまなく歩き、彼の没後4年目で弟子たちがあとをついで、ついに日本地図を完成させた。
米国のマクドナルドハンバーガー創業者のレイ・クロック氏も、50才代半ばまで、マルチミキサーのセールスマンをやっていた。ケンタッキーフライドチキンの創業者カーネルサンダースも60才を越えるまで1店舗のガソリンスタンドを所有するにすぎない変わり者社長だった。
夢と情熱は肉体年齢を超越する。私たちのクライマックスはまだ来ていないのだ。