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ある専門店の社風改革 その2

Rewrite:2014年3月20日(木)

良貨が悪貨を駆逐するために、きのうご紹介したこの会社が社内の人事教育面で打った手を確認する。

1.大量の新卒定期採用を始めた。
2.教育担当職を設け、人材育成に専念させた。しかも、この初代・教育担当職には店長の中から腕利きをあて、店舗に対する影響力をもたせた。
3.教育担当職に「社内報」を毎月発行させた。この社内報制作にあたっては後述する「特別な編集理念」をもたせた。
4.年度教育予算を従業員一人当たり30万円と破格な計上をし、予算の消化を求めた。
5.教育機会不均等の方針を出し、選ばれた者だけが重点的に教育投資を受ける制度(資格制度)を作った。
6.論文大会を定期的に開催し、業務の改善改革に向けた自由レポート提出を求め、優秀者には渡米の機会を与えた。

ポイントは幾つかあるので、順に見ていこう。まず、2番の教育職について。
一定以上の社員規模になると、組織のなかに人事担当職を設けることになるのだが、普通は事務系社員をあてる。場合によっては、ほとんど営業経験をもたない社員を人事や教育の担当につける場合が多く見受けられる。大企業ならば人事の専門家を登用する意義もあるが、中小企業ならば営業に精通した人材を人事にあてるべきである。このケースの会社でもそれが功を奏した。

次のポイントは3番だ。社内報を出す目的を誤解すると、単なる社員の親睦を深めるだけのツールで終わってしまう。それも目的のひとつかも知れないが、このケースの会社では、編集理念が一点に集約されていた。
それは、「会社方針の徹底」だ。例えば、半年後に賃金制度を改革する予定があるとする。こうした大きなニュースは、ある日突然に発表されるべきものでなく、社内報などを通して少しずつ予告したり、それに同調してくれる社員の言葉を掲載したりしながら布教していく必要がある。同じことを繰り返しことばをかえて伝達してゆく。
また、社員インタビューの記事を書くときにも、最近どんな勉強をしているか、今の目標は何か、などの質問をし、他の社員への刺激とする。この社内報は社風改革のための啓蒙紙となり、武器となった。

次のポイントは教育予算の問題。各種の調査機関のレポートによれば国内企業の社員一人当たり教育予算は数千円/年 程度。出店が盛んなチューン企業ではこれが大きく跳ね上がって10万円/年。このケースの会社では30万円/年を計上。しかも選抜された社員にそれを重点的に配分した。若くて有能な人材に権限を与え、徹底した教育を施し、絶えず何かに挑戦するようにし向ける。そうした挑戦課題を見つけるためにも教育は欠かせない。予算をケチって、社長が知っていることだけを社員に教えたところで知れている。社長も社員も関係なく学ぶことと挑戦する社風を上記4~6の施策で築き上げた。

こうした一連の政策の結果、一種のカルト集団的な熱気となり、勉強・ハードワークなどの価値観になじまない社員は入社してもつまはじきにされることとなる。このように見ていくと、誰にとっても居心地の良い職場などあり得ないということもわかる。

さて、このケースからあなたはどんな取捨選択をされるか?
業種業態や企業規模にもよるが、現実的な目標として、社長とその中核スタッフに対する教育予算を計上されてはいかがだろう。この「教育費」には交通費や宿泊費も含めるので、社長ひとりで年間に100万円は使ってほしいものだ。