石橋を叩いて渡る人、叩いても渡らない人、叩き割る人、石橋をみたら突っ走る人など、いろいろな意思決定のクセがある。多分にそれは性質に負うところが大きいが、そもそも性質そのものをリーダーとしてふさわしいものに開発する必要があるのだ。あなたが普段、なにげなくやっている意思決定の方法を、力強いリーダー型に変えよう。
どうすれば良いか?
ちょうどそこへタイムリーにもサクセスなにわ株式会社のニュースレター「成功への道しるべ N0.146」が舞い込んだ。発行者の田中得夫社長にお許しを得て、要約した内容でお届けしよう。
40数年前のこと、当時の先進国に負けじと、日本も南極大陸調査のための「昭和基地」を建設した。ある冬のこと、調査を継続するために越冬隊を送るかどうかが大きな問題となった。当時、南極で冬を越した経験はだれもない。なにが起きるかわからない。人命第一、安全第一でゆくか、それとも世界に先駆けた調査をおこなって国威をあげるのが先か。
初の越冬隊長と予定されていた京都大学の永田教授は、どんな危険があるかもわからないので、事前によく調査をしたうえで越冬隊を送るかどうかの結論を出したいと主張し、文部省もこれに同調した。
ところが、同じ京大の教授で後年、エベレスト登頂を成功に導き、日本山岳会々長にもなられた西堀栄三郎氏は真っ向から反対。越冬し、調査を進めることに価値がある。そのために昭和基地をつくったのだから、まず越冬隊を送ることを、さきに決めるべきである。決めた後に、予測される危険は調査したらいい。決心をする前に調査をすればするほど、止めた方がいいという結論になると主張し、大激論になった。
結局、「それなら西堀さん、あなたがやればよい」 ということで、永田氏に代って、初代越冬隊長として氏が派遣された。そして、素晴らしい調査・研究の成果をあげ、日本の昭和基地の存在を世界にアピールしたのだ。
「石橋を叩けば渡れない」 は、同氏の著書名でもあり、”チャンスは逃がすな。まず決断せよ。石橋を叩くのは、それからである。” といった内容だ。今なお発刊されているところをみると、名著の証しといえよう。
『石橋を叩けば渡れない』(生産性出版)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4820116541/ref=sr_aps_b_/250-7391188-9336251
同じ調査でも、やると決心したあとの調査と決心する前の調査とでは、心構えにおいて大きな差がある。新しいことにはリスクがつきものであり、調査すればするほど問題点がわき出てきて決断できなくなるものだ。「状況がよかったら決断しよう」などと考えているかぎり、あなたは石橋を渡るときが訪れないだろう。
我が国の国民性として、安全主義・無難主義・合意主義をとろうとしすぎていないだろうか。ビジネスにおいても決断する前に調査をし過ぎているのではないだろうか。リスクや達成の見通しの有無によって決断するのでない。西堀氏のように、価値ある事かどうか、ビジョンや理念、志にかなった事であるかどうかという高い次元の判断に基づく決断が必要なのだ。
調査はそれから徹底的にやり、リスクを排除していけばよいのだ。先に決断してしまえば、潜在意識が働き始める。偉大な成功の多くは、最初から見通しがあったわけではない。やらねば、やりたい、と決断するところから生れていることを知ろう。
あなたは環境の産物ではない、環境があなたの産物なのだ。
参考:サクセスなにわ株式会社 田中得夫社長発行
「成功への道しるべ」 (N0.146) http://www.sgp-jp.com