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続・コカコーラ社の新事業

●昨日のつづき。

昨日と今日のコカコーラに関する記事には当然ニュースソースがある。
それは一冊の本なのだが、まずそちらをご紹介しておこう。

米国コカコーラの元社長、ドナルド・キーオ氏が書いた『ビジネスで失敗する10の法則』(日本経済新聞社)で、コカコーラ社やライバル社の経営の内幕も知れて、楽しく読むことができる好著だ。

●長年にわたってコカコーラ社に投資し続けてきたウォーレン・バフェット氏が本の帯にシンプルな一文を寄せている。

「(この本の法則に)1つでも当てはまるなら仕事人生は失敗です」

●著者がこの本で書きたかったことはこういうことらしい。

・・・長年の経営者人生を終えて私は確信をもって言える。それは、成功には法則があるとは思えないということ。 “実証済み” という触れ込みで成功に関するアイデアを伝える人はたくさんいるが、企業経営に一生を捧げてた私が言えることは「いまだに成功の法則が分からない」ということ。たとえば指導力というテーマひとつ取ってみても、指導力をつける確たる方法は専門家も含めていまだに誰も分かっていない。従って事業で勝利する方法を話すように求められてもそれはできないと答えるしかない。私が話せるのは、どういう方法をとれば負けるかということだけであり、私が示す方法を採用すればかなりの確率で負けることを保証する・・・。

●こうして出来上がったのが本書の10法則で、これを実践すれば必ず負けるという。
単品ビジネスで多国籍企業をつくった会社の舞台裏が知れて興味深く読み進められる。

★ビジネスで失敗する人の10の法則
⇒ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=3113

●昨日はコカコーラ社がワインビジネスに参入したところまでを書いた。
「炭酸飲料とジュースだけでは経営基盤が安定しない」ということでの新規事業だった。
彼らはカリフォルニアのワイン農園を買収し、ピークは全米のワイン生産の11%をコカコーラ社が占めるまでに成長した。ここまで来れば立派な事業であり、新事業は成功したと言えるはずだった。
事実、コカコーラ社の経営幹部はテーブルにコーラとワインを並べて悦に入っていたという。

●だが今日は、このワイン事業を手放すきっかけになったエピソードを紹介せねばならない。

コカコーラ社を「わたしの会社」と言っていた創業家のロバート・ウッドラフ氏(当時80歳代の前社長)は、ワイン事業への参入が本当に正しい選択なのかにずっと疑念をもっていた。

●彼は老体にむち打って主治医と友人を連れてアトランタからカリフォルニアに飛び、入念にワイン製造の実態を見てまわった。
再びアトランタに戻ったウッドラフは当時の経営陣に向かってこんな話をもちかけたという。

・・・
たしかにワイン事業は面白いね。わたしはカリフォルニアでぶどう園をつぶさにみてきた。なんでも、ぶどうの木を植えてから収穫ができるようになるまで 5年から 6年かかるそうじゃないか。
その間、かなりの数の人が果樹の世話をし、天候に恵まれてよいぶどうが収穫できるように祈ってもいる。すべてが順調に進めば、そのあとようやくぶどうを収穫し、工場に運んで絞り、大きくて極めて高価なステンレスタンクに入れて発酵させるそうだ。そのつぎに、高価なタンクからワインを小さな樽に移す。これもやはり高価なフランス製オーク材でできている。その樽は一個 55ドルするらしい。
ワインは小さく高価な樽のなかでしばらく熟成される。その間にワインの 15%が蒸発して消える。
かなりの期間、熟成させたワインはつぎにボトルに詰める。このとき、ボトルごとに税金を支払うが、その後も熟成のために貯蔵する。

(以下、略するがいかにワインビジネスが儲からないかを筋道を立てて話している。そして次のように結ぶ ウッドラフ氏。)

「ところでわたしは、朝に瓶詰めして午後に売り、それもたいていは競合する商品がないところで売る事業で育ってきた。こういう種類の事業に参入したいものだ」

●本当にワイン事業は儲からないのか。そしてこの先も利益貢献が見込めないビジネスなのか。
経営陣は入念に検討した。そしてシーグラムにワイン事業を丸ごと売却した。

●「朝に作って午後に売って競合する相手がいない」

そんなビジネスをコカコーラは探している。最初の事業が恵まれすぎていると、新規事業の立ち上げは大変なことだ。だが、それをやらないと時間の問題で衰退が始まる。かといって功を急いで妥協やスキがあると、企業は凡庸な ”総合カンパニー” になっていく運命にある。

そのむずかしい新事業を成功させてみせる会社だけが 50年、100年、200年・・・、と栄え続けることができるのだ。

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