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A所長の決心

●昨日、ある方とお会いした。愛知県で司法書士事務所を経営される50 代前半の所長(男性)で仮のお名前を「A所長」にしておく。開業してもうすぐ 20年になるそうだ。

今日は古田土会計さんの発表会の様子を書く予定だったが、急きょ、その司法書士さんのことを書いてみたくなった。

●「今後の事務所経営についてご意見を頂戴したくてお尋ねしました。
幸い僕はまだ50歳そこそこなので時間が多少あります。私に足りないものは、リーダーシップと資金力と利益と人材と後継者とビジネスアイデアだけです」

●ずいぶんいろんなものが足りないのですね?

「はい。でも時間と闘志はあります。あと、体力もあるのですが、近年は衰え気味で、毎晩 7時間以上眠らないと次の日が辛いです。あと、宴席でビールを5杯以上飲んでしまうと二日酔いになります。昔にくらべて、ずいぶん酒量が減ったものです」

●5杯というとコップですか?

「いえいえ、生大です」

●今日の訪問の目的は何でしょう?

「きっかけが欲しくてお邪魔しました。経営者として僕は再出発したいです。早いもので開業してからあっという間に20期を迎えてしまいますが、今までのやり方をガラリと変えてみたいと思ったのです」

●ガラリと変えるとは?

「武沢さんのメルマガを2年前から購読するようになり、少しずつですが本物の経営者になりたいと思うようになっています。以前の私は、法人としての司法書士事務所を良くしようなどと思ったことはなく、個人所得や個人資産を増やすことがメインでした。ですから、会社は個人利益の調整弁にすぎなかったのです。私に万一のことがあれば、会社は清算して廃業すれば良いと思っていたのです。しかし、あることがきっかけで、そんな考え方は捨て去ろうと思うようになりました」

●何かのきっかけがあったのですね?

「はい、姪っ子の入社です。私の弟から ”娘を預ってほしい” と相談があり、最初は、“面倒くさい” と思いました。彼女が子供のころにはよく遊んであげたもので、その頃から私によくなついてくれていました。でも高校生になってからは一度も会っていなかったし、それに彼女に対して給料をまともに払ってあげられるかどうか不安でした。でも、とりあえず一度は会ってみることにしたのです」

●学卒者なのですね?

「ええ、今年の3月に大学を卒業するのですが、どこにも就職しなかったそうです。ほとんど就活をしなかったと聞きました。自分がやりたい職種が見つからなかったらしい。久しぶりに会ってみると、彼女はたいへん美しくなっていました。頭の切れる聡明な様子は以前のままでした。話し合って分かったことは、当社で働くのは決して腰掛け気分ではなく本気で働きたいということ。資格取得の勉強もするし、いずれはコンサルティングもやれるようになりたいとハキハキ答えてくれました。将来の夢は何なの?と聞いてみたら、ビックリ仰天するような答えが返ってきました」

●どんな夢だったのですか?

「当面は私の司法書士事務所の秘書として所長をサポートし、いずれは私の後を継いで所長になって会社経営をやってみたいと言うのです。私は耳を疑って『本気なの?』と何度も念を押しました。その都度、『ハイ、本気です!』と目を輝かすのです。『あなたが考えているより数倍は貧乏な事務所ですよ』と私は言いました。すると彼女は『だったらこれから裕福になりましょう』と笑ってくれました。

●うれしいですね。

「妻にプロポーズして OK をもらったとき以来のうれしさで、やる気がこみ上げてきました。こんな気持ちは久しぶりです。結婚して4年目に妻を事故で亡くして以来、人のためにがんばるという気持ちが薄らいでいることに気づかずにいたようです。
この20年ほど、私は眠っていたに等しいと思いました。それを姪っ子に教えられました。彼女の人生を預かって、真剣に守ろうと決心しました。将来、彼女が結婚し、家庭をもち、子供を作っても、彼女に働く意思があればどれだけでも働いてもらえるような会社にしようと強く決心しました」

●素晴らしいじゃないですか。

「あとはどんな事業計画をつくって事務所運営をやってゆけば良いのか。それをお尋ねしたくてやって参りました」

ここまで聞いてAさんの来意がすべて理解できた。

●本気でやり直そう!
まずは私が主催する経営講座に参加することをおすすめした。まずはそこからのスタートである。
そして、Mac を開いてひとつの書式をお目にかけた。エクセルで作った『私の経営実力』というタイトルの一覧表である。

創業時から今日にいたるまでの業績を一覧にし、各期ごとに経営評価点と評語を付けるようにしたものである。

●この表に過去の実績を埋めて、気づいたことや決意したことを FAXしてもらうことにした。

A 所長は、「分かりました。でも、どれだけいい加減な経営をしてきたのか武沢さんに笑われそうで辛いです」

どんなに辛かろうが済んだことだ。自分がやってきた経営実績に再度直面し、悔い改めることが今後を辛くないようにさせる。
それが経営者の立志であり、第二の創業になるはずだ。年齢や歴は関係ない。

『私の経営実力』の書式については明日、もしくは近日に続きを書く予定。