●経営計画発表会に招かれて企業に出向くと、時々思わぬハプニングに遭遇することがある。
役員や来賓の突然の欠席もあれば、社長が当日になって風邪をひき、聞き取れないような声で発表していたこともある。
●だが、私が知る限り過去最大のハプニングは、発表会当日になっても経営計画書が完成していなかったこと。
あれは10年近く前のこと、名古屋の建築会社だった。はじめての発表会ということで社長も気合いが入り、全員が集まれるように日曜日にホテルを借りて発表会を開くことにしていた。
何ヶ月も前から会場を予約し、銀行や主力の取引先など関係者と社員あわせて30名ほどが集まってきていた。
●発表会の日から逆算してスケジュールを組んだ社長は、一週間前には一度計画を完成させている。だが、数日前から迷いがではじめた。
主力事業の海外進出を目玉とする計画内容で本当に良いのかどうか、直前になって迷ってしまった。
●結局朝までまんじりともせずに考えた結果、当日のドタキャンを回避するために苦肉の策に打って出た。会議のタイトルを変更することにしたのだ。
当初予定の『経営計画発表会』を『経営計画相談会』にした。
「発表」から「相談」に。
たった二文字を書き換えるだけのことなのだが、社長にとってみれば、さらしものになるようなきまりの悪い決断だったと思う。
●「私としてはこんなことを考えているんですが皆さんはどう思いますか?」
「アジア進出についてやるべきかどうか、決断がつかないのですが皆さんはどう思いますか?」
そのような会議になったのだが、それがかえって開かれた議論になり、社員の共感を呼ぶことになったのだから、心配は要らないものだ。
●ちなみにその会社は『経営計画相談会』という名称を翌年以降も使っていたらしい。
●偶然の産物で盛り上がる発表会になったわけだが、社員の参加意欲を高めるような発表会のやり方はあると思う。
社員に相談する余地を残す。それも着地点を前もって決めて相談するのではなく、ガチンコで相談する。自分も一票持っていると思ったときの参加意識の高まりは絶大だ。
●あとは、社員からみてうれしいことをどんどん取り入れよう。
1.経営計画委員会を作る
経営計画書のとりまとめを行う委員会を設置。委員長は社長が兼ねても良いし、若手に任せてもよい。
2.経営計画発表会 Project を作る
発表会をひとつのイベントとしてとらえ、それを企画・運営するProject をつくる。部門横断のメンバーで構成され、会場選びから日程決め、予算からタイム
スケジュールまですべて任せる。
3.経営計画書をデザインする
プロに頼んで計画書をデザインしてもらう。おしゃれで持ち歩くのがじゃまにならない美しい計画書にしあげる。また、計画書の表紙や中味のいたるところに
社員や顧客の笑顔を登場させる。
これも Project か委員会の仕事の一部にする。
4.社員に感謝する
表彰状、感謝状、年間(月間)MVP など表彰をたくさん作る。
そのひとつひとつに賞状を用意し、社長の思いが込められた文章で感謝する。それに副えられる副賞の金一万円は十万円の価値をもつ。
5.意外に大事な会場選び
人は服装に応じてふるまう。その服装選びは会場の雰囲気に合わせるもの。
ローコストの公民館よりも年に一度の発表会ぐらいはホテルの会議室を借りて行うとよい。おたがいにその日はフォーマルに振る舞えるものだ。
このように、経営計画発表会は社長にとって特別な日なのだが、社員からみて思い出深い一日にしてあげよう。
また、こうした活動もブログや Facebook などを使って外部に発信していくと良いだろう。