●「日本国内で仕事をしている人は何人ぐらいだと思う?」
「分かりません!」
「じぁあ日本人のうち何%ぐらいが働いているだろう?」
「分かりません!」
「あなたね、”分かりません”、”分かりません”はないだろう。たしかに君はそれらについて誰からも教わってないかもしれない。だけどね、あなたが知っている情報から考えていけばだいたいの数は言えるはずだよ」
●ぶ然とする彼。
知らないことでも、知っていることをつなぎあわせていけば分かるようになる。そのことを彼に伝えたかったのだが、彼にその真意が伝わったかどうか。
●先週もお伝えしたように、ある会社の研修で次の問題をグループ対抗で解きあうことにした。
1.日本には会社の数が幾つあるか
2.世界には会社の数が幾つあるか
3.日本にはコンビニが何店舗あるか
4.日本中のコンビニの総売上は幾らか
5.この部屋からみえるあそこのマクドナルドの年間売上げは幾らか
6.日本には株式を公開している会社がいくらあるか
7.日本にはプラネタリウムが幾つあるか
8.中国ではコカコーラが年間何本飲まれているか
9.東京都内には寿司屋が何店舗あるか
10.日本人全体でペットボトルの水を年間で何リットル飲むか
(制限時間は90分)
●それぞれの正解は次のとおり。一部は私の推測値が混じっている。
1. 300万社
(法人定義の仕方によって150万社とも400万社ともいわれる)
2. 6,000万社(武沢の推測。数字の根拠は先週述べた)
3. 44,000店舗
4. 9兆円
5. 一億円
6. 5,000社(複数上場含む)
7. 250館
8. 300億本
9. 5,000軒
10. 26億リットル
●50人の社員を8班に分け、優勝チームのメンバー全員に Amazonチケット1万円分をプレゼントする。社長がそう約束したので、研修会場は大いに盛り上がった。
●私のこの出題に対して、「ネット検索は自由ですか?」と質問が飛んだ。もちろんパソコンや携帯を使っての検索は禁止した。研修の趣旨に反するからだ。あくまで自分たちがもっている知識や情報をチームで共有し、それをもとに推論し、チーム全体の総意を形成するところに意味がある。
●では、この問題、どのように考えていけばよいのか。私の考え方を一部ご披露したい。すでに先週の金曜日号で問題「1」と「2」についての根拠は述べたので今日は続きを書いてみよう。
★先週の金曜日号
→ http://www.e-comon.co.jp/magazine_show.php?magid=3750
●「3.日本にはコンビニが何店舗あるか?」
近くにあるコンビニを思い出してみよう。ひとつの店舗でどの程度の商圏人口をカバーしているかを考えてみる。私のオフィス(名古屋の丸の内)の周りはコンビニ密集地で、おおむね人口数百人に一店舗程ありそうだ。単純にそれを日本の人口から割れば13,000万人÷500人で26万店舗あることになる。これは人口密集地での統計なので、全国では当然これ以下になる。問題はその程度がいかほどか、である。
仮に5分の1とするなら5万店舗、10分の1なら2.6万店舗。おそらく、その中間だろうと考え、4万店舗程度と回答すれば正解にほぼ近くなる。(正解は44,000店舗)
★「JFA コンビニエンスストア協会」
→ http://www.jfa-fc.or.jp/folder/1/img/20111121145332.pdf
●「4.日本中のコンビニの総売上は幾らか」
これは、「3」と連動してくる問題だ。コンビニの総店舗数が推計できれば、それに平均売上げを掛ければよいだけである。
一店舗あたりの売上げはどのように推計すれば良いか。平均的な店舗では一日あたり何人がレジで買い物するかを考えてみよう。
ランチタイムのピーク時にコンビニに行くと行列ができている。あの行列がおおむね一台10人。ランチタイムには合計100人が買い物をすると考えよう。すると一日の客数はその何倍かになるかだ。
仮に10倍だとしよう。すると一日あたり1000人が買い物をする。客単価は約500円程度だろう。すると一日あたり売上げは50万円。その365倍が年商なので、1億8千万円が平均年商。それが全国に44,000店舗あるので約8兆円が業界総売上と推計できる。(正解は9兆円)
●いかがだろう。
「10」の問題まですべてやっているとあと三日ほどかかりそうなのでこれにておしまいにする。
●このように、いかなる難問も論理を積み重ねていけばある程度近い答が導きだせるということを社員に教えよう。
こうした発想法は、ビジネスの現場ではたえず求められているはずだ。
ちなみにこの日の研修で優勝したチームは10問中8問に正解した。
プラスマイナス30%の範囲内を正解としたので基準は緩いが、それでも大したものである。やればできるのだ。