●あれは中学生のころだったと思う。ある菓子メーカーがキャラメルのおまけに外国のコインを入れていた。プラスチック製のおもちゃだが私はそれを集めるのに夢中になった。米国のドル、イギリスのポンド、フランスのフラン、ドイツのマルク、イタリアのリラ、スペインのペセタなどなどまだ見ぬ国々で実際に使われているコインを見るとワクワクした。
●当時、私のおこづかいは週給制だった。毎週金曜日になると50円もらえた。私はその50円を握りしめて駄菓子屋まで自転車で行く。家のすぐ近くのお店ではそのキャラメルが売られていないので、遠く離れた駄菓子屋まで行くのだ。
ある金曜日はあいにくの豪雪だった。腰まで雪がつもり、学校が休校した。そんな日にこづかいをもらった私はいつも通り駄菓子屋に行こうとした。だが母は止めた。
「信行、やめなさい。学校が休みになるような日に外出してはいけません」
●私はこの日を心待ちにしていたので、「行きたい」と母に言った。
すると母は「こんな雪の日に駄菓子屋さんがやってるわけないでしょ。
それにキャラメルを運んでくれるトラックだって道路を通れないのだから、行っても無駄です。こんな雪なんだから自転車だって走れないでしょ。明日にしなさい!」
●結局私は行った。すごい雪なので自転車ではなく歩いて行った。途中で雪がはげしく降り出したが、構わず歩いた。「今日こそイタリアのリラかイギリスのポンドを出したい」と考えていると、一時間以上の道のりはあっという間だった。幸運にも駄菓子屋はやっていた。
キャラメルも売っていた。私はいつものように一箱買って家に戻った。
母はあきれていた。
大抵のものには淡泊な私でも、絶対欲しいと思ったものだけは、何があってもかならず手に入れる。
●昨日の朝の号外でご紹介した「社長におくる一冊『丸山敏雄伝』」。
人生を再建させる鍵はいかにして自己を律するか。そして人間学に目ざめることが肝心であり、その要は朝起きにあると説いた丸山敏雄。
氏の思いは倫理研究所となり、現在、倫理法人会は会員数6万と全国有数の勉強会組織になった。
★昨日の「がんばれ社長!」号外
http://www.e-comon.co.jp/magazine_show.php?magid=3487
●その号外をご覧になったのだろう。
昨日午後の「がんばれ!講座」にお越しになったT社長(女性)は、私の顔をみるなりこう言われた。
「武沢さん、『丸山敏雄伝』はどこで買えますか?ネットではすでに売り切れみたいで中古本も売られてませんでした」。
●すでに版元にないのは知っていたが、amazonのマーケットプレイスには20数冊在庫があるのは前夜確認済みだった。
「おかしいなぁ」とその場で確認したところ、やはり売り切れてしまっていた。
●「またおいおいマーケットプレイスにウリモノが出てきますよ。他のネット書店でも出物があるかもしれないし」となだめる私。
だがT社長は、「今の私に一番必要な本だと思います。どうしたら買えますか」と執拗に食い下がる。
「さあ?」と言いながら私がカバンから『丸山敏雄伝』をひっぱり出すと彼女はその裏表紙にある版元の番号に直接電話をかけた。
●さすが、名古屋有数の金融ショップを作ってきたすご腕社長らしい行動力。
しかし、「すでに絶版で在庫は一冊もありません」と言われたようだ。
「売っているところをご存知ありませんか?」とねばる彼女。版元はどこかの電話番号を彼女に伝えたようだ。教えられた番号に電話をかけ直すT社長。そこは倫理研究所の事務局のようだった。
幸い在庫があり、注文すると自宅へ送ってくれるということだった。
「良かった~、武沢さん。二冊買えました」とホッとするT社長。
もし同様の方がおみえなら、倫理法人会で入手できる可能性がある。
●「欲しい」と思ったら必ず手に入れる。日本中で一冊も買えないと誰かに教えられたとしても、決してそれを信じない。彼女なら日本中の古書店に電話をかけまくってまで入手するだろう。
「欲しい」ものは誰が何を言おうとあきらめない。それが本業に直結していたら必ずうまくいく。