●東京と香港、果たしてどちらの家賃が高いのか?
香港の不動産市場は2008年に35%以上の価格下落が起きた。しかし、2009年からふたたび高騰しており、バブルの前兆ではと指摘されるほど活況である。
昨年の秋、中心部のマンションで50億円を超える億ションが登場し、しかもあっさりと売約済みとなった。この金額は、アジアで過去最高額とみられている。
建物名は「39 Conduit Road」。香港中心街にあり、その物件は64階で、面積は約530平方メートル。ベッドルーム5つを持ち、街を一望できるという。価格は5700万ドル(約51億円)。
●日本の賃貸マンションも負けていない。
家賃の月額が最高で531万円もする超高級マンション「ラ・トゥール代官山」が先月完成し、お披露目された。
住友不動産が売り出しているもので、すでに今月から入居が始まっている。
家賃は、最低でも月額92万円。平均専有面積240平方メートルで、平均賃料は181万円。7階建ての最上階にあるペントハウス(13戸)のうち、500平方メートル超の住戸の賃料は531万円で、過去最高額の家賃とみられている。
入居予定者は、30歳代から40歳代が中心で、企業のオーナーが多く、5戸のペントハウスにはいずれも日本人が住むという。
家賃531万円の住人は、30歳代後半の「やり手」経営者らしい。
●私の印象では、賃貸価格が高いのは東京で、分譲価格が高いのが香港か。フォーブスのこんな調査結果もある。
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=1226&f=national_1226_005.shtml
●さて、香港の資産家は高級住宅街に屋敷を構えるか、あるいは都心のど真ん中で会員制の高級賃貸マンションを借りるかのいずれかであることが多い。
賃貸マンションとはいっても超がつくほど豪華なもので、先日私が見学してきた物件は、家賃以外にまとまった金額の入会金が必要だ。
金額は聞けなかったが、おそらく○千万円という金額のようだ。
それ以外に、安いところでも100万円/月 ほどの家賃が必要になる。
●そこにお住まいの日本人経営者にご案内いただき、ウォーターフロントのレストランで朝食をご一緒した。
建物内は、中華や洋食などのレストランの他、ボーリング場やビリヤード、トレーニングジム、ダンスやヨガなどのスタジオ、プール、ジャグジー、スパ、サウナ、エステ、カフェ、図書室、ショッピングセンターなどなど、生活するために必要なものはなんでもこの会員制マンションの中に揃っている。
おまけに自宅の清掃や洗濯、シーツ・タオル交換を毎日やってくれる。
香港は中国同様、外食が非常に多いので奥様は自宅でご主人のために食事を作ることがあまりない。従ってここでは、奥様天国といえる生活だろう。
高層マンションなので、部屋の窓は開かない。エアコンで一年中一定の温度・湿度に保たれているので、奥様はテレビで外の気温を知り、外出するかどうかを決めるという。
●吹き抜けのロビーの大きなカベにこのクラブを作ったオーナーの書が掲げてあった。
持恆健身
勤倹建業
包 玉剛 一九九〇 九月
とあった。
健康をたもち、勤勉に働いて倹約すれば仕事はかならずうまくいく、という意味である。
有名な海運王・YKパオ(1918~1991年)の直筆であり、彼がこのクラブのオーナーだったのだ。
華僑最大の金持ち・李嘉誠(リー・カシン)と並び賞されるYKパオの直筆の書は、まじめで几帳面な人柄がしのばれるものだった。
もちろんデジカメにおさめてきた。
YKパオ氏の直筆 → http://www.flickr.com/photos/takezawa/5116604336/
(フリッカー)
●そのYKパオが、ガンでなくなる直前までいつも大切に聞いていたテープがある。娘のアンナが形見分けでそれをもらいうけ、聞いてみたら市販の英語教材のテープだった。
「父は大学を出ていなかったことで、自分はまだ何か足りないという思いが向学心につながったのでしょう」とアンナ。
●独学で英語を勉強し、ハーバードビジネススクールをはじめ、世界の大学で英語で講演した経験を持つYKパオ氏。
充分すぎるほど英語に堪能でありながら、「自分はまだ足りない」という気持ちを最後まで持ち続けたからこそ、彼をしかるべき立場に押し上げたのだろう。
素直に見ならいたいものである。