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意識の貯蔵庫に入っているもの

●「あ、昨日のメルマガに誤字があった」と今朝、湯船につかりながら、突如気づいた。
湯からあがって調べてみたら、案の定、「一喝された」と書くべきところを「一括された」と書いている。お恥ずかしいかぎりだが、お詫びして訂正したい。湯船で誤字に気づいたのはこれが初めてだが、書いたものが意識にしっかり残っているようだ。

●意識といえば、昨夜のこと。

仕事を切り上げようとしていたら、なつかしい友人のS氏(45)が訪ねてきた。氏の用件を終えて、「久しぶりだよね、いつ以来?」と、しばし世間話をはじめた。だが、どうも変だ。要領を得ないのである。

プロ野球の話、サッカー、芸能、政治、なんの話をしても「へえ、そうなんですか」としか言わない。不思議に思ってきいてみたら、Sさんは新聞もテレビも雑誌も見ないという。必要な情報だけをネットで入手し、あとのことは、一切知らないらしい。

●「それで大丈夫なの?」と聞いてみたら、こんな話をしてくれた。

「私が尊敬しているアメリカ人教育者が1998年に来日し、横浜で講演されました。そのときのテーマが、 “毎日接している情報を遮断せよ”というものでした。私たちの周囲から一方的に入ってくる情報のほとんどが不安をあおるものや、スキャンダラスなものばかり。
明るくて積極的な気持ちになれるニュースはほとんどありません。だったら、これを機会にいままでの習慣をあらためて、雑誌や新聞、テレビの類を身の回りから全部排除してしまいなさい、というスピーチでした。それだけでなく、演台の上に用意してあった雑誌や新聞をビリビリに破りすて、ステージ上に用意されていた大型テレビも鉄のハンマーで粉々に砕いてしまいました。そのパフォーマンスのときのすさまじい形相は、今もまぶたにしっかり残っています。私はその日を境に、テレビも新聞も雑誌もみない生活を始めました。家族も協力してくれました。もともと、酒は一滴も飲めないたちですから、夜のおつきあいはありません。仕事と読書に割ける時間がいちじるしく増え、そのおかげで、仕事も順調に発展してきましたし、ずっと増収増益を続けています。これからもさらに大きく飛躍するためのプランが目白押しで、毎日が楽しくてしようがないです。情報遮断の影響は絶大だと思います」

●たしかに彼は昔と変わらない子供のような笑顔で、45歳にはみえない。

私も事件や事故のニュースは一切みないが、それでも気になる大事件だけは追いかけてしまう。それに、政治や経済の番組はよくみている。
政治家や芸能界のスキャンダルや円高不況の話題、日本の国際競争力が落ちているとか、官僚が悪いことをしたとか、中国が横暴であるとか、自殺者が増えているとか、経営者のマインドが冷え込んでいるとかの類のニュースには日夜接している。

●だから、仕事の注文がひとつ減っただけで、「あ、当社も不況の影響を受けている」と勝手に連想し、さらに注文が減るのではないかと負の連想ゲームをはじめてしまうこともある。それを拒否し、力を振り絞って前へ進もうとがんばっているが、情報遮断は考えたことがなかった。

●「日本はいま、世界でも指折りのビジネスチャンスに満ちあふれた国です。とくに中小企業家や起業家にとっては次の10年、いや20年は続くであろう夢の起業大国が日本で、かつての黄金の国・『ゴールデン・ジパング』の再来とささやかれています。当然、世界の起業家たちがこぞって日本進出を急いでいます。また、日本は世界でも屈指の安心して暮らせる大人の国であり、世界の住んでみたい国ランキングでも堂々首位を獲得するなど・・・」

というようなニュースが連日報道されていたら、きっと少子高齢化も緩和され、威勢のいい話がもっと飛び出てくるはずだ。

●私たちはそれをマスコミに期待するのではなく、自社または自分がその発信者となって世間をリードしていきたいものである。

Sさんが帰ったあと、私は10時近くまで仕事をやって帰宅することにした。オフィスを消灯し、ドアを施錠した。エレベータに向かおうとしたら、なぜか廊下の非常灯が切れていた。エレベータの前だけがボンヤリ明るいが、あとは真っ暗だった。
ふと正面をみた瞬間、廊下の突きあたりに膝をかかえてしゃがんでいる小学生の姿があった。いや、勝手にそれを妄想してしまった。
その映像は前々回の『世にも奇妙な物語』に登場した病院の少年だった。

「いかんいかん」、私の無意識の中にくだらない情報や映像がしっかり入ってしまっているようだ。明るい希望や夢でそれらを覆い尽くしていかねば。