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絶体絶命から千載一遇に

●二年前の師走のこと。

私の新刊本『使える!社長の四字熟語100選 経営に効く!』が発行されたお祝いにと、マンダラ手帳の松村寧雄先生が夕食に誘って下さった。

基本的に先生が夜、外食されることはまれである上に、先生から誘っていただくことなど異例中の異例なので「是非!」とお供した。

●緊張していたのか、行ったお店がどこだったのか思い出せない。
ただ、魚が美味しく話題が楽しかった記憶がある。

「いやぁ愉快です。それに、うまいですね、このエンガワ」、私は刺身を無心にほおばっていたが、先生はつまみにはほとんど手をつけず黙々とビールだけを一定のペースで飲み続けられた。
私のペースより1.5倍は早いだろうか。

●先生の生ビールが4杯目に入ったころ、核心にせまる質問がでた。

「とろこで武沢さん、今後の事業構想は決まっているんですか」

私は、口の中のものを飲みこみながら、「もちろんです」と答えた。
そのやりとりが、数分後、あの叱責に変わろうとは。

以下、その時のやりとり。

武沢:何しろあと半月もしたら新年ですから、来年の経営計画も個人計画もバッチリ作ってあります。あとは、粛々と行動に移していくだけなんですが、ただまぁ、ちょっと・・・。
松村:うん?「ただまぁちょっと」のあとは何なの?
武:計画はバッチリあるのですが、リーマンショックとその後の景気後退がどれだけ広がるか。それ次第では、先がよめないかもしれません。
松:(グビグビッとビールを半分飲み干し)我々は日本経済がどうなるかという一般論を話し合っているのではない。
あくまで、あなたのことを聞いている。なのに、先がよめないってどういうことなんですか?
武:リーマンショックが、私の計画達成に大きな影響を与えるかもしれない、ということです
松:わからないなあ、不思議なことをおっしゃる。あなたのことがあなたでも分からないというわけ?あなたの計画の主人公はどっちなんですか?景気が主人公なのか、あなたが主人公なのか?
武:もちろん私です。でも、私も会社もその景気の中で生きているので、景気がどうなるかによって自分も会社も大きく変わってきます

松:(ジィーッと私の目を見つめながら)分かってない!

一括された。

店内にいた他の客が我々のほうを見たように思う。

●松:じゃあ、質問を変えましょうか。あなたの仕事の領域において、市場や顧客の本質は何?

武:「市場や顧客の本質」ですか?う~ん、なんでしょう。

松:私のセミナーで何度も言ってきていることですよ

武:う~ん、・・・・・・・・・・・・、すいません。忘れました

松:「空」(くう)ですよ。

武:市場も顧客も「空」なのですか?

松:そう、実体がない「空」なんですよ。なので、○○ショックとか不景気とかいわれるものにも実体がない。その実体がないものに惑わされて、オロオロしているのが今のあなたですよ。

武:実体はなくても、確実にそれは存在しますし、社会に影響を与えていますが

松:それは条件や環境として存在しているだけで、あなたそのものに直接影響を与えるのか与えないのかはあなたが決められる。
つまり、「空」のもうひとつの本質は、かかわり方(縁)次第で、いかようにもそれが変えられる、ということです。

武:ふ~む、なるほど。深いですねえ。「空」を知っておけば、絶体絶命にも、千載一遇にもなるということですか。

松:さすが四字熟語本の作者だ

●知識として「空」と「縁」について知ってはいたが、しょせん、それは知識に過ぎなかった。本当に自分の生き方とかかわりをもったのはそのときが最初だと思う。

●この世の一切が「空」。

空に教えられ、悟らされよう。その上で自分のかかわり方を変えていけば、絶体絶命のピンチが千載一遇のチャンスに変わるのである。

人生とビジネスの主人公は自分自身なのだから、自分のかかわり方を変えれば良い。そのための作戦書が「経営計画書」や「人生計画書」なのだろう。

●一昨日の10月10日(日)、マンダラチャートフェスティバルが開催された。
全国から100名を超えるマンダラチャート・マンダラ手帳のユーザーが東京のアルカディア市ヶ谷に集結し、互いの活用事例を交換しあった。

私は実行委員長を仰せつかった都合上、たえず会場全体の空気を感じ取りながら一日を過ごした。そして、「果たして手帳ユーザー会だけであればこんなにも人が集まるだろうか」と思っていた。

この場内の空気は、手帳の使い方を知りたい人が発する空気ではなく、マンダラの叡智にかくされた達人の人生、達人の経営を松村先生から学びたいからではないかと思った。

「空」に目ざめ、「空」に悟らされる人生と経営をめざしたいものである。