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会社もダイエットしよう

●8月16日号のつづき。

デザイン会社を経営するクリフ・安東氏(仮名)の会社では、来期、虎とリスのイラストを最重要テーマにするという。
その心は「リストラ」。

●ついにクリフまでもがリストラの話か。

「せいぜいがんばってくださいよ」と激励したものの、正直言ってリストラという後ろ向きな経営課題が最重要テーマにふさわしいものかどうか疑問に思っていた。

●その翌日、久しぶりにT社長と夕食をご一緒した。予約してあったお店は、かねてより一度行ってみたいと思っていた銀座の有名焼鳥店、「バードランド」(ミシュラン★)。

有名な「すきやばし次郎」(★★★)の真ん前にあった。

●T社長の会社では今年、社員旅行で韓国に行かれたそうで、社員とエイの刺身「オイフェ」を食べて美味かったというようなエピソードをまず聞いた。

63歳になられるがあいかわらず精悍で、そういえば数年前、T社長から提案があってダイエット競争をしたことを思い出した。
どちらがたくさん体重を減らせるかを一年かけて争うもので、途中まで私が10キロ以上リードし、楽勝かと思っていた。
だが、秋口以降「このままでは終われない」と猛烈な追い込みが始まり、最後は微妙な判定になった。

12月の仕事納めの日、T社の会議室で二人はパンツ一枚になって互いに計量し、結局は、わずか1キロ差で私が逃げ切った。今思い出しても壮絶な減量バトルだった。

●その日を境に、私の体重は増加の一途をたどり、T社長はその後も減らし続けた。私のお腹の出っぱりをみながらT社長はこう言った。

「武沢さん、減量は永遠の友だちでしょ。やったりやらなかったりするものじゃないと思うなあ」
「いやぁ、いきなり耳がいたいです」
「太りやすい人にとっては一生のテーマですよ」
「ええ、そうなんですが…」
「会社も同じなんですよ」
「え?会社もダイエットですか」

●その後、T社長はこんな話をされた。

「太りやすい人にとってダイエットは一生のテーマ。それと同じことが経費削減です。会社も人間以上に太りやすい。だから、経費削減やリストラというのは売上げの好不調に関係なくやるべきもので、経費削減の担当役員を常時、一名置いておくべきです。そして、経理課は別名・経費削減課。いつも経費削減の数字目標をもっているべき部署ですよ」

●あまりにも的を射ている発言だったので、あえて皮肉っぽく反論した。

「たしかにその通りでしょうが、業績が好調なT社さんがリストラなんかしたら、かえって利益が出すぎて税金が大変じゃないですか?適度に体脂肪を付けておいた方が、節税になる。スリム過ぎるのは、イザという時に絞りようがないから、かえって大変でしょ」

「武沢さん、それは違うよ。経費削減と節税を混同して考えるから経費削減が進まない。あくまで切り離して考えるべきですよ。今は節税の話をしているのではなく、経費削減をすすめる話をしている」

12月決算のT社は、今期の黒字がすでに確定している。それどころか、来期決算の黒字もすでに確定しているそうだ。さらにいえば、創業以来30数年、一度も赤字を出したことがないという。

●「そこまで行くと、社長が心配することはもうなくなりますよね?」と質問すると、「社長から心配がなくなることはないでしょ。ただ、いつの心配をしているかが社長の差ですよ」と返ってきた。

・今日、明日の心配をしている社長
・今月、来月の心配をしている社長
・今期、来期の心配をしている社長
・3年後、5年後の心配をしている社長
・さらにその先の心配をしている社長

あなたはどれか? ということのようだ。

●また、誰の心配をしているかが社長の差でもあると私は思う。

・自分のことで精一杯の社長
・自社のことで精一杯の社長
・心から業界全体の心配をしている社長
・心からお客や社員や取引先や地域社会の心配をしている社長
・心から日本全体の先行きを心配している社長
・心から世界や地球の問題を心配している社長

あなたはどれか? ということでもある。

リストラや経費削減は決して後ろ向きのことではなく、常時やるべき経営課題なんだと思うことにしよう。

<あすに続く>