●うわさレベルの話だが、宮部みゆき氏は『模倣犯』の試写会で映画のデキの悪さに途中で席を立ったという。
その真偽は分からないが、うわさを信じたくなるほどひどい映画で、amazonでも見事なまでに酷評されている。
★DVD「模倣犯」⇒ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=2527
映画『模倣犯』のエンドロールを見ながら私は、原作がヒットした作品の映画化は期待してはならないと”学習”した。
もちろん例外もある。
●12年前、『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』(主演:ロビン・ウィリアムズ)を観て泣いた。
アメリカに実在する現役医師、「パッチ・アダムス」(1943年生れ)の実話ときいて感動もひとしおだった。
実在の「パッチ・アダムス」の名はハンター・キャンベル・アダムス氏(以下「アダムス氏」)。
氏に関するウィキペディアの記事は次の通り。(武沢要約)
・・・学生時代から金儲け優先の医療のあり方に疑問を持ち、愛とユーモアを根底において、人に優しい医療を目指す。ウェストバージニア州のポカホンタスに、自分の目指す医療のできる、しかも無料で医療サービスの受けられる病院「ゲズントハイト・インスティテュート」を設立する。「ゲズントハイト・インスティテュート」は「お達者で病院」といった意味で、die Gesundheitはドイツ語で誰かが突然くしゃみをした時に、そばにいる人がいう台詞で、「大丈夫?」「気をつけ
て」「お大事に」といったニュアンスの言葉である。12年間そこで無料の診療活動を行った。
パッチ・アダムスは、さらに社会的な活動家でもあり、一種の民間外交官でもあり、プロの道化師、アーティストで俳優でもある。たとえば、彼は毎年世界中のボランティアたちと共にロシアに出かけて、孤児や患者やそのほかの大勢の人たちを喜ばせたり、希望を持たせるようなチャリティ活動をし、1998年にはボスニアにも出かけている。
・・・
●そのアダムス氏が「自分の映画は見なくてよい」と語っている。
謙遜もあるのだろうが、日本の医大における講演会で「私の映画は見なくていいから『赤ひげ』を見なさい」といい、「赤ひげ」を「ドリトル先生」と並ぶ理想の医師像として挙げている。
それを知ってかどうか、デーブ・スペクター氏も日本の医大の講演会で必ず『赤ひげ』を見ることをすすめているようだ。
●映画『赤ひげ』(1965年、黒澤明監督作品)の原作は山本周五郎の『赤ひげ診療譚』。
映画の前半はほぼ原作通りに進むが、後半はドストエフスキーの「虐げられた人々」を取り入れて構築されたという。
山本周五郎をして「原作よりいい」と言わしめ、興行も大ヒットを収めた。
私も11歳のとき父親に連れられて見たが、白黒映画なのにカラー映画並みのリアリティがあり、手術シーンでは目を閉じた。また、主演の三船敏郎が本当にひげを赤く染めたとか、加山雄三がこの作品で役者を続ける決意をしたとか、この映画を作るために黒澤監督が自宅を売却したなどの話題が世間を騒がせてもいる。
●仕事を頼めば高額な費用が発生するのが当然という医療分野で、敢然とそれを「無料」または「無料同然」で引き受けたのがパッチ・アダムス氏と赤ひげ先生。
彼らを”理想主義者だ、社会主義者だ”と一蹴するのは簡単なことだ。
しかし、資本主義のルールの中でも彼らのような理念と理想を追い求める勇気ある行動は報われなければならない。
今やっている「あれ」を無料に出来ないか、それでも経営が成立できる方法がないか、真剣に考えてみよう。