経営コンサルタントとして独立して8年を経過した。最初の顧問先は岐阜県のガソリンスタンド会社だった。その後、様々な業種・規模の会社とお付き合いさせていただいた。独立した頃も今も変わらず提供している仕事に、「経営計画作り支援」がある。経営計画はおおむね5カ年計画までを作ることが多く、古くからのお付き合いがあるところでは、すでに第一次5カ年は経過し終わっている。
「あすありと 思ふ心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」
この有名な和歌は、9才の少年・松若丸(後の親鸞)が慈円和尚に弟子入り志願したが断られたときに詠んだとされている。“今この瞬間にことをなし遂げないと、明日があるという保証は何もないんだ”、という若き親鸞の緊張感が伝わってくる名句ではないか。
私の顧問先企業も同じだった。5カ年経営ビジョン達成の命運は今期、いや今月にかかっているんだ、という気持ちのところが成長してきた。こうした緊張感ある企業にはひとつの特色がある。それは、『ギュッと締める力』があるのだ。
例えば、今まで試みたことのない新たなマーケティングのやり方を導入したとしよう。アイデアレベルではどこの会社でもかなり面白いものが出る。ところが、『ギュッと締める力』がない会社は、実行力・徹底力が乏しく、「あの件、どうなったの?」というような曖昧な結果で終わっていく。アイデアが良かったのか悪かったのか、評価不能のまま次のアイデアが議論されることになる。
『ギュッと締める力』がある会社はどうか。決定されたことは必ず遂行され、評価され、継続実行すべきか中止すべきかを決定していく。曖昧な結論で立ち消えになっていくアイデアなど存在しない。
これは、しつけの差である。経営幹部ひとり一人が、やるべきことはすぐにやる、という習慣を持ち合わせていれば『ギュッと締める力』がある。その経営幹部をしつけるのは、ほかでもない、社長なのだ。社長自身の仕事の習慣が、企業の『ギュッと締める力』に絶大な影響を与えているのだ。
若き親鸞の和歌にあるような緊張感を大切にしよう。