未分類

沢山書けば忘れられる

●何かに熱中することは大切だが、内容次第では「玩物喪志」(がんぶつそうし、モノをもてあそんで大切な志を見失うこと)になってしまう。

ジムに熱心に通っているときは「僕はダイエットするために生まれてきたのか?」と思うことがあるし、朝から晩まで本を読んでいたときには、「私は本を読むために生まれてきたのか?」と考えてしまう。

今夢中になっていることのずっと奥にある大切なイメージがきっちり保持されていれば、そうした邪念が浮かばないはず。

●夢でも願望でもTO-DOでも、とにかく書いて書いて書きまくろうと教えられる。最初はそれで結構なのだが、そのあとに余分なものを削って削って削りまくることを忘れてはならないと思う。

●いったん書き尽くしたあとは、思いきって削る。
そして、極力シンプルにする。次に、本当に大切なものだけをもっともっと具体的にするために時間を割こう。できれば完成のイメージが映像になるまで描ききろう。それを「ビジュアル化」という。

●かつて、私はビジョン実現のためのプランニングセミナーを受講した。
とても充実した内容だったが、その中で、「計画→実行→評価(Plan→Do→Check)」という一般的な管理サイクルだけではうまくいかない、と教えられた。

●最初の「計画」段階よりもっと前に「ビジュアル化」という大切なプロセスを経ないと、チームワークは困難だというのが彼らの主張だった。「なるほどなぁ」と私は納得した。

●「ビジュアル化」といえば、近年、マインドマッピングやマンダラチャートなどの発想支援法が流行しているが、左脳人間でも特別な練習を積まずにすぐ使えるのが人気の理由だろう。あなたの「ビジュアル化」を助けるツールがこうしてあるわけだから有効に使いたいもの。

●しかし、いくら優れた技法であっても、その使用法を誤ると書き尽くした満足感だけで終わってしまったり、下手をすると、書いたことによって記憶から消去されてしまうことがあるから注意が必要だ。

●ロシアの心理学者シェレシェフスキー(1892~1958)は、記憶力の問題で悩んでいた。
彼の場合、「すぐに忘れる」のではなく、なんでも覚えてしまい、ずっと忘れられないという記憶力の良さで苦しんでいたという。

「少しでも多く忘れたい」と彼はいろんな方法に挑戦し、ついにみつけた方法がこれ。→『聞いたことをそのまますべて書き写す』

●この “画期的” な方法によって、かなり多くのことを忘れることができたというから何とも皮肉なものである。

片っ端から次々にメモしていくことで脳は、何が大切で、何が大切でないのかが判断できなくなり、その結果、どんどん忘れていくというのだ。
それは、まるでぶ厚い経営計画書のようではないか。膨大な数のTO-DOリストのようでもある。

●「ビジュアル化」とは、発想をいつまでも横に広げるのではなく縦に深掘りしていくことでもある。それが「ビジュアル化」というプロセスだろう。

そろそろ2010年計画に着手する季節である。
「ビジュアル化」というプロセスに充分な時間をかけてプランニングしようではないか。

※今日の原稿は、5年前の今日(2004年9月9日号)の記事をアレンジしたものです。

・2004年9月9日号 http://www.e-comon.co.jp/magazine_show.php?magid=913