●二人の出会いは1998年5月。当時、セールスマンをしていた小渕は、関西全営業マンの中でトップの成績を取り、息抜きとして週1回・土曜の夜だけ地元・堺市の商店街で路上ライブをやっていた。
一方の黒田は、その2~3年前から同じ商店街で路上ライブをやっていた。
「自分、歌、うまいなぁ」
「自分もめっちゃ、うまいなぁ」
ぎこちない会話を交わしながら、互いに相手を探り合うように話をするようになる。当時、地元のストリートでは、ミスチルやUNICORNなどのコピーばかりがあふれていた。
そんなある日、黒田と小渕があるストリートミュージシャンの唄を聞きながら感心していた。
黒田:「こんな感じの歌、カッコエエよな」
小渕:「こんな感じやったらすぐ作れる」
と小渕から黒田にオリジナルの曲を提供する話が出た。そして一週間後に出来あがった曲が「桜」。
それを聞いて黒田が打ち明けるように
黒田:「実は一緒にくみたいんや」
小渕:「ぜんぜんOK」
その夜は朝まで音楽について語り合った。
ちなみに、コンビ名決定のいきさつは、「桜」を作った時の歌詞カードに「こぶちとくろだで『コブクロ』でええか」と書いていたのが元になっている。
(『コブクロ』オフィシャルホームページより)
●そんなコブクロも昨年、デビュー10周年をむかえた。
日本レコード大賞受賞や紅白出場など、ふと気づいたら二人は両肩にいろんなものを背負って唄っていた。そうした荷物をいったん全部降ろして、デビュー当時小さな車で全国をキャラバンしたころの気持ちで再スタートしたというコブクロ。次の10年の進化が楽しみだ。
●曽野綾子さんの著書『「いい人」をやめると楽になる』(祥伝社黄金文庫)はすでに35刷。背負っているものを降ろして、自然体で生きたいと願う人が多い。
●曽野さん自身が「いい人」をやめて楽になったのか、非常に痛快なホンネ文章が次々に飛び出てくる。そんな箇所を2~3紹介してみたい。
・・・私も昔不眠症をやった。私の場合は、よく寝て、頭をクリヤーにしておかなければ、いい作品が書けない、という一種の幼稚な責任感からであった。
しかし今はまったくそう思わない。寝不足で朦朧とした頭で書いたものでも、小説は小説だ。そんなものを編集部に手渡すことはもちろんいいことではないのだが、人間はいいことだけをして生きているわけではない。それどころか、いい加減にその場その場でお茶を濁してこそ、生きていけるのだ。それがわかれば、時には知らん顔して駄作を編集部に渡すくらいの小さなサギは、して当然というものだろう。
むしろこうした自分の姿が明瞭に見えるくらいのほうが、重厚な小説が書けるというものである。・・・
「知らん顔して駄作を編集部に渡すくらいの小さなサギはして当然」というくだり、なかなか言えるものではない。
●「いい人」をやめたければ、自分の世界をひとつ持つことが良いようで、こんなことも書いている。
・・・
大人になると自分にない才能を持つ人がこんなにもいるということに驚いたものである。
私が楽だったのは、たった一つ小説という分野を自分の専門として守っただけで、後は持ち前の依頼心の強さに戻り、人はすべて先生と思い、その人の得意なことはできるだけなすりつけて、「してもらった」ことである。
・・・
●余分な荷物を降ろすことが大切だ。同時に、ビジネスする上では、使命感や目標をもつことが欠かせないが、それは余分な荷物とはいわない。
それらは外側に背負い込む荷物なのではなく、内側に必要な燃料の役目をするのである。
それが燃料なのか荷物なのかを見極めることができるのはあなただけだ。
★『「いい人」をやめると楽になる』(曽野綾子著、祥伝社黄金文庫)
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