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中継の是非

●あるコンサルタント会社の社長が、相談があるとやって来た。

その会社が主催する人気定番セミナーをこのたび、ネットで有料放映する考えだという。
「へぇ、面白そうですね」
と私が言うと、どうやら専務がそれに反対しているらしい。セミナーの内容をネットで公開したら実際にセミナーに来られる人が減る、というのが専務の意見らしい。

●「やってみないと分からないとは思うが、武沢さんのお考えはどうですか?」と質問された。
私はすぐに質問の意味を理解し、「あ、それですか、分かりました。
その話題についてはすでに80年前に決着がついていますよ」と申し上げた。
「え?80年前に?」と彼。

●実はこのとき、最近仕入れたばかりの情報をもとに私はこんな話をした。

「高校野球の歴史は1915年(大正4年)の第1回全国中等学校優勝野球大会に始まります。そして甲子園で高校野球のラジオ中継が始まったのは、昭和2年のこと」

●相手の社長はポカンとしているが構わずに続けた。

「甲子園球場に人を運びたい阪神電鉄はそのとき、NHKに対してラジオ中継をやめてほしいと申し入れした。中継されたら観客が減ると思ったから。
ところが、NHKがそれを拒否して中継を始めると、客が甲子園球場に殺到するようになった。NHKさん、ありがとうございます、と阪神電鉄は手のひらを返して中継に感謝した。
ラジオ中継で観客が減るどころか、中継のおかげでファンの関心が高まって、生で見たいという欲求が高まったわけだ。もちろん、この場合、中継するものがすばらしかったからであって、何でもかんでも中継したら人が増えるというわけでもない。ですから、私の結論は、内容が良ければ中継はプラスに作用する、というものです。いかがでしょうか」

●「なるほど」とその社長は帰って行かれたがその後の結果が私も気になる。

余談ながら、昭和2年のラジオ中継で勢いを得たNHKは、調子にのってよりいっそう趣向をこらした中継をしようとした。翌、昭和3年には、放送に臨場感をだすため、ホームベース近くにマイクロフォンを埋め込んだ。しかし、打者が足場を固めたり、バットでホームベースをたたいたりする度に大きな音がするため、「うるさくてかなわん」との聴取者からの抗議が押し寄せ、この試みは失敗に終わったという。

●放送技術の向上によってテレビやラジオの中継も格段に進歩したが、まだまだ完ぺきとはいえない。もっともっとファンサービスのために取り組んでほしいことがある。

無理を承知でいえば、こんな音声も聞いてみたいもの。

・キャッチャーとバッターとの会話、かけひき
・監督やコーチがマウンド上で味方投手に投げかける言葉
・監督が審判に猛抗議しているときのやりとり
・ベンチからのヤジや声援

これらのものがテレビやラジオで中継されるようになったら、もっと視聴率が聴取率がアップすること請け合いである。
なかなかそれができないということは、放送できないような言葉でも飛び交っているのだろうか。