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不満なし≠満足

今、あなたの会社は顧客に対して満足を与えているだろうか。それとも不満を与えているのだろうか。実はそのどちらでもない状態、つまり、不満も満足も与えていないという状態が一番危険だろう。いつその顧客を失うか、神のみぞ知るという状態にあるかも知れないのだ。

今月、そうしたことを感じさせる出来事を体験した。

オフィスコーヒーのY社が、飛び込みでやってきた。すでに私はU社を利用しているので不要である、と断った。しかし、この営業マンは目が光った。チャンスあり、とみたのだろう。

味の良さ、それにサポートの万全さを強調してきた。ちょうど休憩しようとしていたところなので、話を聞いた。

そもそもオフィスコーヒーとは何かを説明する必要がないので、私はその時点で有力な見込客なのだろう。しかも、U社とのつきあいは1年半という実にみごとな乗り換え頃でもある。

あとは試飲会に持ち込み、それを成功させるだけ。ここまでこれば半分以上は即決で決まるという。そして私は3日後の試飲会で即決し、Y社に乗り換えた。あっさりとU社は客先を一件失うハメになったのだ。「気の毒なことをしたなぁ」という若干の後ろめたさが私にはある。だが、U社に対して私が悪いことはしたわけではない。

ひるがえって自分の決断の経緯を考えてみた。いままでのU社に不満はあったのか?実は不満などなかった。不満を自覚していなかったというべきか。ホットコーヒーの味は美味しいと思っていた。価格については30袋で9000円だった。今度のY社のコーヒーは、ほとんど同じ味に思えた。値段も、30袋で9600円のものをU社にあわせて9000円にするという。

結局、味も値段もほとんど変わらないのだ。では一体なぜY社に乗り換えたのか。ここに“顧客満足”という問題のヒントが隠されているのではないか。

オフィスコーヒーの企業は、営業と配達は別のスタッフが行うことが多い。最初の切り込みは、女性中心の営業チームが行い、あとの配達からアフターフォローは男性チームが行うという形態だ。そこまでの役割分担は理解できるし、U社もY社もそれは同じだ。問題は、契約後の体制にある。セールスの継続性をどこまで大切に考えているかという企業姿勢の問題だろう。決してU社の配達社員が無力だったのではない。彼は一生懸命やってくれたのだ。

一度取り引きを始めた顧客に対しては、よほど何かの問題を起こさない限り、取り引きを継続していただけるという認識が我々にはある。

それは間違っていない。だが、継続していただける保証は何もない。たえず競合他社の攻勢にさらされており、いつなんどき顧客を奪われてもおかしくない。

そうした危険な状態から顧客を守りぬくには、セールスの継続性が大切になる。何度でも売りこみに行くのだ。セールスの継続性とは、文字通り何かを販売し続けるという意味ではない。「あなたは弊社の大切なお客様です。」ということを自覚してもらうためにコンタクトをとり続けるのだ。時には訪問し、時には郵便で、時にはメールやFAXで、あらゆる方法でコンタクトをとる。

・見込客であるかのように顧客を扱うこと
・上得意先であるかのようにすべての顧客に接すること

によって顧客は、いつもあなたの会社の顧客であることを自覚してくれるようになる。

客先を一件失ったU社には、そうした体制がなかった。これは担当者の問題ではなく、社内システムの問題だ。この1年半、U社からは新しい何かの情報も提案も何もこなかった。この原稿を作っている今朝の段階でも、U社の社名をなかなか思い出せなかったし、担当者の名前は今でも思い出せない。

注文処理だけをきちんとこなしてくれていたのだ。そこにつけ込まれるスキがあった。
蟻の一穴ほどのわずかなスキだった。今度のY社は、月に一度は水抜きにくるという。夏だからアイスコーヒーメーカーも無料で設置するという。たったそれだけのスキなのだが、タイミングによっては顧客は去るものだ。セールスの継続性ということを会社幹部がもっと自覚していれば、社員は今より楽になるのに、と思う出来事であった。