「情熱・熱意・執念」「知的ハードワーキング」「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」
この『三大精神』だけで東証一部上場を果たし、京セラを超える高さのビルを建て、連結対象企業の社員数を含めて34,000人を超える企業グループを作り上げた。社長の永守重信氏率いる日本電産グループだ。しかもすべての偉業を、1973年7月23日の設立からわずか30年で。
http://www.nidec.co.jp/first/index.html
永守氏が雑誌の取材で次のように語っている。
「赤字を黒字にするのは簡単。経営者の熱意と執念さえあればいい。」
「日本電産は22社買収して一社も失敗していない。百発百中でっせ。買収した会社の役員もそのまま。赤字を出してきた役員が、ちゃんと利益を上げとるわけや。どう変えるかといったら、『三大精神』、これだけや。難しい話はいっさいしません。まず会社のなかをきれにせいよ、と。それから、休まずに来い。この二つしか言わない。」
会社が汚い、遅れずに来い。その二つが社員の士気のバロメーターだと永守氏は語る。
仮に社員が100人いても士気が90%であれば、90人の会社と同じ能率になる。90人しか働いていないのに100人分の給料を払っているわけだ。
会社は無駄な給料を払い過ぎているのに、社員は誰一人もらいすぎているとは思っていない。むしろ、まだ少ないと思っている。これが士気の低い会社のジレンマだ。
おまけに8時半始業なのに、8時半ギリギリに出社してくる。実際に機械がちゃんと回り始めるのは9時になる。夕方になって終業時刻になると、今度は逆に早く切り上げてしまう。士気が低い上に実質勤務時間まで短い。これではどんなに優れた技術があっても儲かるわけがないというのだ。
日本電産という会社、社長自らが365日16時間勤務をしている。毎朝6時50分には、社内の誰よりも早く出社しているという。『三大精神』にあるように、会社全体が相当なハードワークのようだ。
他社の営業が20件の訪問で満足しているのに、永守氏は5倍の100件を要求する。受注量が違うのは当然だ。厳しすぎるゆえ、定着率は必ずしも良くないようだ。だが、定着率の高低はさほど問題ではない。むしろ、並程度かそれ以下の人材では、会社のスピードについていくのが困難なのだろう。それが自然淘汰・自然の摂理だという。
退職問題について、社長の永守氏が気にしているのは、定着率の問題ではなく、去っていった社員のその後の待遇なのだという。
有能な人材が去っていき、日本電産よりもいい会社に行って、良いペイをもらって、高い地位についていないかどうかをチェックしているというのだ。今まではゼロできた、と豪語する。
むずかしい論理は必要ない。日本電産は、『三大精神』だけでここまでやれる、と証明してくれたわけだ。
それは、理念、社是、社訓など、どのような呼び名であっても構わない。言葉が本当に力をもつに至るまで、徹底してこだわってみよう。
「赤字を黒字にするのは、経営者の熱意と執念さえあればいい。」
業績は部下のせいではない。自分次第なんだ、と思うことで逃げ口上は通用しなくなる。
(参考:「週刊東洋経済」 2002 1/19号)