テレビドラマ「コンバット」でヴィック・モロー扮するサンダース軍曹がかっこ良かった。その上官のリック・ジェイソン扮するヘンリー少尉も上官らしくて好きだった。
部下の命を預かる戦闘現場のリーダーとしてサンダース軍曹は、さしずめ「24」のジャック・バウアーよろしく身体をはって大声で部下を指揮し、チームを勝利させてきた。
さて昨日、船場吉兆が廃業した。
内緒でやっていた不正が内部告発によって次々に露呈し、「転げ落ちるようにキャンセルが相次いだ」と涙で謝罪会見する女将。
「のれんにあぐらをかいた」とも語ったが、果たしてどこまでが彼女の本心の言葉なのか。
彼女は再建の顔として、夫を継いで社長を任されたが、振る舞いから察するに、経営者というより女将の仕事しかできなかったのではないか。いや、女将の仕事もどれだけ充分にできていたか。
湯木佐知子社長は、女将であり、社長であった。
女将業は「兵の将」であり、社長業は「将の将」である。その両方の役割が彼女に期待されたはずだったが、根本的な組織改革はできなかった。
組織を改革したい、成長したいと思ったら、「将の将」が組織には必要なのだ。できるものなら、規模が小さいうちから社長は、「兵の将」と「将の将」の二役をこなさねばならないのである。
「兵の将」は問題解決する人である。「将の将」は問題を未然に防ぐ人である。
「兵の将」は、昨日の不始末が原因の今日のトラブルを解決する人であり、「将の将」は今日とは違う明日をつくりだす人である。
内部告発といえば
今月20日、日本マクドナルドは、8月から直営店店長約2千人に残業代を支払うと発表した。いわゆる「名ばかり管理職」と糾弾されたことへの対応だ。だが、支払う給与の総額は増やさないともいう。
残業代は払うが、店長手当などの役職手当を廃止するので差し引きゼロということらしい。
“優秀な”人事部員たちが役員会に起草し、問題解決をはかったのだろうが、これなども「兵の将」的な、表面的問題解決にほかならない。
姑息な対策としか思えないのだ。
社員の献身と貢献は期待すべきだが、社員の怨嗟の声を無視すると敵に回すことになる。
マクドナルドは「クルー」という名称のアルバイトを多数採用し、クルーのやる気を刺激し、彼らの献身で成長してきた会社のはず。
今回の「名ばかり管理職」問題では、目先の問題解決ではなく、10年、20年先を見すえた本質的な経営改革を行ってもらいたい。
あれだけの大企業になると手術も大変だとは思うが、マクドナルドは、改革のお手本を世間に示す好機をみずから放棄してしまったようだ。
問題が露呈したことが問題なのではなく、表面を取りつくろうだけの対応のほうがもっと大きな問題を生む。
単純に社員の給料を上げ、会社の利益を減らすことが必要だとは思わない。それは稚拙なやり方だ。
経営陣と社員が一体化していくための骨太なビジョンを打ち出してほしいと願う。