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グローバル中小企業の時代

朝日新聞2008年5月15日付朝刊に興味深い記事をみつけた。

<グローバル中小企業の時代>と題したその記事は、大企業がのたうちまわる中、グローバル(世界規模)に活躍できる中小企業の時代がすでに始まっているという主旨のもの。
さっそく記事を引用してみたい。

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フィナンシャル・タイムズに、パルミサーノIBM会長の寄稿が掲載された。趣旨は、「多国籍企業は絶滅の危機に瀕している。今後は、地元に拠点を構えつつグローバルに技術や人材を生かし、世界のユーザーに製品・サービスを提供するグローバル中小企業が成長する」というものだった。
グローバル化が加速する中で、規模の利益を求めて、企業は大型化してきた。しかしそれが、必ずしも期待された収益力・成長力をもたらさなかったことは、多くの実証分析や事例が明らかにしている。
背景には、市場や技術の急速な変化に、大企業が迅速・適切に対応できなかったことがある。その結果、グローバル中小企業の存在感が高まるのは自然であり、同会長の指摘は正しい。

そこで強調したいのは、グローバル中小企業が、おそらく最も多く輩出しているのが日本だということだ。
世界シェアナンバーワンの製品を有する中小企業が日本に数多く存在する。彼らの多くは部品・素材企業であり、年月をかけて蓄積してきた優れた技術やノウハウの塊である彼らの製品を、世界の企業が求めている。他者がまねできない独自性と強い競争力によって値下げ競争に巻き込まれることもない。

彼らに共通しているのはかねてからグローバルに事業を展開してきたことだ。経営トップの人的ネットワークが市場開拓の契機となった、海外での評価が日本での事業拡大に貢献した、海外での口コミが海外事業の拡大をもたらしたなど、その中身は多彩である。

日本はIBM会長が指摘するはるか以前から、グローバル中小企業の時代の中にいる。今後はそれが、経済活性化の主要な原動力となるだろう。(山人)
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果たして本当に”多国籍企業が絶滅の危機”なのかどうかは別にして、元気のよいグローバル中小企業の例はたくさん見聞きするようになった。

たとえば、樹研工業(愛知県豊橋市、松浦元男社長)。百万分の1グラムの歯車を開発し、世界中をあっと言わせた。
当時、樹研工業の話題が半年で北半球をおおったという。彼らが作り出す製品の購入者は世界的大メーカーばかり。にもかかわらず、びた一文値引きしないし、納期も樹研が主導権を握る。
これからも三年に一つはだれもが「アッと驚く」技術を発表していきたいと松浦社長は語る。

樹研工業には高学歴・高技術な人材ばかりが集まるのかと思えばそうでもないらしい。
採用は先着順で無試験だというのだ。そればかりでなく、タイムカードなしで一日七時間労働体制をめざし、残業は申告制という実にユニークな松浦流会社経営。

こんな会社が「グローバル中小企業」の好例だと思う。

樹研工業 http://www.juken.com/

もう一社、有名な会社を紹介してみたい。

私が生まれ育った大垣市の近くに未来工業という会社がある。資本金70億円、売上270億円(2007年実績)の名証二部上場企業だ。
あの松下もかなわない電設資材のカリスマ企業として、やり方次第でローテクの分野でも中小企業が大企業に勝てることを証明してきた会社だ。同社の創業者・山田昭男相談役は、著書『楽して、儲ける!』で、その型破りの経営論を展開しているが、これまたユニーク。

経常利益率が常に15%以上、年末年始休暇は19連休、残業ゼロ、にもかかわらず給料は地域で一番という驚異の会社だ。
「休め、働くな、よきに計らえ」という方針でやってきた、たまものだという。

未来工業 http://www.mirai.co.jp/index.html

グローバル中小企業の時代と聞いて、「すわ、海外進出!」と浮き足立つ必要はない。

樹研の松浦社長に未来の山田相談役、いずれも古稀と喜寿の世代だが、経営に賭ける情熱は誰にも負けない。何かの分野で世界一になることを心がけてきた。
その結果、大企業が自社の製品やサービスを前にして撤退していくようになったし、ごく自然に外国相手にビジネスしている、ということだろう。
「国内では利益が出ないから外国に活路を求める」というのではなく、誰にも負けない何かを作り、より大きなチャンスと可能性を求めて諸外国に視野を広げようということだ。

先着順採用、会議自由参加で世界一の小企業をつくった

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