「申し訳ないのですが、ちょっと道路が混んでて遅れそうです」と連絡がはいった。
「ダメです。何とかしてください」、「遅れる分だけ罰金をもらいますよ」などとは言わない。
「あ、そうですか。こちらは大丈夫ですのでお気を付けて」などと無難に答えるようにしている。
だが、そんな時、遅刻した相手に対する信用ポイントは間違いなく下がる。無意識に下げてしまうのだ。それが度重なるともう会わない。
遅れてきた本人は、遅刻やキャンセル(特にドタキャン)に対して罰金やキャンセル料を払わずに済んだとしても、間違いなく信用ポイントの減少というコストを支払っているのだ。
不義理なことばかりしていると、天にある「信用貯金」の残高がみるみる減る。そして残高がマイナスになると天罰がくだる。
今までの不義理に対するツケをまとめて支払わされるのだ。もし自分がアンラッキーだと思えるならば、一度「信用貯金」の残高チェックをしたほうが良いだろう。
その逆に、とても義理堅く、人から信頼されることを行っていると「信用貯金」の残高がグングン増える。残高が一定額に達すると、天恵(てんけい)が降りそそぐ。
なんてラッキーなんだろう!と思えるときがそれだ。
「昭和の日」の昨日、
日本青年会議所 東海地区協議会主催「第35回青年の船 とうかい号」結団式が名古屋市内で行われた。
中部地区の20代、30代の若者432名が乗船する研修船は9日間の船旅で香港を往復する。関係者合わせて600人の貸し切り研修船だ。
丸々9日間生活を共にすることから生まれる連帯感と感動がいかばかりのものか、私自身が25年前に参加者のひとりとして乗船しているのでよく知っている。
その当時、四半世紀のちに、自分がその研修船に講師として乗り込むことになろうとは予想もしていない。
第35回青年の船 公式サイト http://www.tokaigo.com/35thsen/
今年の「青年の船」は6月7日から9日間。
出発5日めの6月11日に香港に上陸。チームに分かれて現地の方々と交流する。
もし太平洋上でもネットアクセスが可能なのであれば、毎日レポートをお届けしたいと思っている。
25年前、私が29才のとき青年の船に乗りこんだきっかけは勤務先の社長の誘い。
当時青年会議所のOBになっていたH社長は、ある日の夜、私の席にやってきてこう告げた。
「武沢君、ちょっと今いいかい。実は、青年の船という研修船がある。この案内パンフレットを君も読んでみて興味をもってくれるようなら、君も参加してはどうかと思う。費用は個人負担になるが、有給休暇をまとめて取得できるようにするから考えてみてほしい」と言われた。
どうやら社長は、社員全員にそう語っているのではなく、個人的に一部の社員だけに声をかけているように思われた。ひょっとしたら、自分だけなのかも知れない。そう察した私は即答で、「あ、分かりました。是非お願いします」と返事した。
剛胆な社長だが、その時ばかりは私の剛胆に驚いているようだった。
私は言葉を重ねた。
「是非、行かせて下さい。パスポートもまだ有効ですし、仕事も穴を明けないようにしておきますから」
乗船費用は約30万円。給料の2.5ヶ月分を自分に投資した。
それからH社長は、自分に投資する武沢という男を評価してくれた。
その後、私は同僚たちの賞与の二倍近くをいつももらうことになる。
約束を守る人、むげに誘いを断らない人、期待に応える人、上司の面子をつぶさない人には上から引きが入る。天がそれを見逃さないのだ。
約束を破る人、誘いをむげに断る人、期待に応えない人、上司の面子をつぶす人には下から足を引っ張られ、上からはフタをされる。天がそれを見逃さないからだ。
人は許してくれても天は許さない。人は見逃してくれても天がそれを見逃さない。人は感謝してくれなくても、天が感謝を返してくれる。
そんな私も昨日の結団式にはあわや遅刻寸前。おかげでリハーサルには間に合わず、私ひとりぶっつけ本番。失態こそなかったが、天の「信用貯金」を引き出す羽目になった。
今日、どこかで誰かに何かのお返しをして、信用の帳尻を合わせようと思っているところだ。