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続・減点70

もしベンチの監督が選手に「得点せよ」とか「失点するな」というサインしか出せないとしたらすぐにクビになるだろう。
そんなサインなら誰でも出せる。

試合中の監督は、選手の力量や調子を見抜いて、いかにして「得点」するのか、「失点」しないのかを状況に応じて具体的に指示しなければならない。
プレイするのは選手だが、させているのは監督なのだ。

さて、昨日の続き。

経営計画発表会において、「今後5年で2倍の売上げにする」と発表したのは良いが、その中味については社員に丸投げしてしまったY社長。

「社長は決定を下す人、部下はそれを実行する人」とY社長は考えているのかも知れないが、それは一部の大企業でのみ通用する話。

社長個人への依存率がとても高い中小企業においては、社長は目標だけでなく、その実現策も同時に示してあげる必要がある。
計画丸投げでは「得点せよ」というサイン同様に、うまくいかないものだ。

Y社長が犯した過ちの二つめは、部下からの質問に面倒くさそうな顔をしたこと。
経営計画の内容に対して質問してくれる社員の存在は貴重だ。ましてや再三再四、社長に食い下がってくるなんて讃えられるべき勇気だ。

にもかかわらずY社長は露骨に嫌な顔をした。
社員は社長の言葉よりも顔を見ている。一瞬の表情の中にかくれる社長の本心を見抜こうとしているのだ。

誠心誠意、社員と対話しよう。誰が正しいのかではなく、何が正しいのかを真摯に語り合おう。Y社が設けた経営計画発表会直後の研修とは、本来そのための場ではなかったのか。

最後に、「客数アップがいつでも正しい」という思いこみをY社長はしているようだ。
一般的には単価向上よりも客数向上を目指せと言われることが多いし、客数が多くなるほど経営が安定するというイメージがある。
だが、思い込みは危険だ。

時と場合によっては「客数アップ」は間違った戦略にもなりうる。

・売上高=客数×客単価

という単純な公式だけでみれば、客数アップか客単価アップかの二者択一と考えてしまう。その結果、消去法で「客数アップが良い」と考え、ユニークユーザー数(実客数)増加をはかってしまう。

売上高の公式をもっともっと多くのバリエーションで考えてみよう。
他の数式にしてみて、何をどのように伸ばすか、減らすかを検討しよう。例えば

・売上高=来店客数×購買率×購買品数×購買単価
・売上高=ユニーク(個別)客数×購買頻度×客単価
・売上高=売場面積×面積あたり売上高
・売上高=販売員一人あたり売上高×販売員
・売上高=見込客数×受注率×客単価
・・・

何度も社長に質問した女性社員は、きっとそのあたりを確認したかったのではなかろうか。

客数を増やそうとするあまり、万人受けをしようとする位なら、むしろ客数を減らすことを考えよう。そのかわり、とびっきり満足度を高め、購買頻度を高めるという作戦も充分にあり得るのだ。

どのような方法で売上15%アップを計るかは、経営理念をもとに経営者がもっとかみ砕いて方向性を指し示す必要がある。