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5年間必死、という言葉の意味

「5年間必死で働けば年齢に関係なく成功できる」という言葉の裏にあるのは、「成功しないのは5年間必死でやらないからである」というメッセージ。なかなか5年間続かないのである。もし5年間続けているのに成功していないのなら、「必死」という言葉の意味を取り違えているのかもしれない。

そこで「必死」という言葉を辞書で調べると「死ぬ覚悟で全力を尽くすこと」とある。安藤百福氏が食糧難の時代に、お湯を注ぐだけでラーメンが完成する即席麺の開発を思い立ったとき、それはまさしく命と引きかえにしても惜しくないほどのやりがいあふれるテーマだったのだろう。それほどのテーマを見つけることができた時点ですでに成功は約束されていたともいえる。

私は何かを世に問うために寝食を忘れるほどに没頭したことはあるか考えてみた。あまりそうした記憶がない。遊びで徹夜することはあっても、仕事でそうした経験は思い出せない。何度か締切仕事に遅れそうになったとき、必要に迫られて徹夜したことがあるが、そうしたあとは反動で半日眠らねばならなくなる。

安藤氏はなにも「徹夜せよ」とは言っていない。必死にやれ、と言っているだけだ。また、「永久に必死にやれ」とも言っていない。5年間必死にやれ、と言っている。

「欲しがりません、勝つまでは」ではないが、興味関心を事業の成功以外にもたないということである。しかも事業の成功の定義は明確でなければならない。成功の定義があいまいだと、ちょっとお金に余裕ができただけで成功した気分になってしまい、お金を使うことを考えはじめる。一番大切なことは、稼いだお金を使わない学習をすることだ。ひたすら貯めて企業としての基礎体力をつけることに没頭せねばならない。

先週の「がんばれ!ナイト in 東京」にNBCコンサルタンツの野呂敏彦社長をお招きした。売上を伸ばそうとすると資金は減るが、粗利益率を改善しようとすると資金が増えるというメカニズムを理論と実例を交えて語っていただいた。迫力充分で、聴衆の25名は全員が感銘を受けた。野呂社長ご自身の起業から半世紀近く経った今日、都内や札幌に自社ビルを何棟も保有されている。それにいたるビジネス三段階成長理論が私にとっては強い印象を受けた。

第一ステージ・・・自己資金(現預金ー負債)が5,000万円、自己資本比率50%超の会社を作る最初の数年間。
その間に必要なことはキャッシュアウトを最小限に留める知恵と覚悟。そのプロセスで金融機関と
強固な信頼関係を構築する。
第二ステージ・・・第一ステージをクリアしたら、自社の強みに経営資源をさらに集中させる。そして「資金力の成長」
という観点からビジネスモデルを再定義し、一気に資金の拡大再生産を計る。人材と仕組み作りの時期で
もある。
第三ステージ・・・第二ステージをクリアし自己資金が1億を突破すると「資金を活かす経営」をはじめる時。本業に負
担をかけない未来投資を開始する。一例として不動産投資を行い、本業がもたらすキャッシュフロー以外
のキャッシュインを計る。それによって、ますます強化な経営基盤、財務基盤を確立する。

私の記憶が確かなら、そのとき野呂社長はこのようなことを言われた。
・・・
こうした第一から第三までのステージを歩みつつ、同時並行で後継者対策、相続対策を計画的に行っていき、社長は引退のあとの生活に一切の不安がない状態を作らねばならない。資金を増やすための知恵はいつでも学べるが、資金の元になる「種火」は自分自身で用意せねばならない。それが今の法人経営では第一ステージで掲げた5,000万円なのである。
・・・

そこで安藤百福氏。5年間必死で・・・、というくだりと、野呂社長の第一ステージの「種火」づくりとが符合するのである。自己資金(現預金ー負債)が5,000万、自己資本比率50%超。そこに至っていない経営者はまずは第一ステージをクリアするゲームにいると認識しよう。資金難、倒産、といった危惧から少しでも遠ざかるのである。強気の増収増益計画はキャッシュアウト(資金流出)を招き、大変危険なのである。そうしたことを意識した経営計画書をきっちり作ろう。

野呂社長には今後、東京はもちろん大阪や名古屋でもご講演願う予定なので、是非一度おすすめしたい。