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緊張しながらうまくやる

初めてプロ野球公式戦の開幕試合を観てきた。予想以上に素晴らしかったオープニングセレモニーの締めは『君が代』独唱。登場したのは和田アキ子さんだった。彼女の迫力ある重低音の歌声は場にふさわしい堂々としたもので、選手や観客の気持ちを鼓舞した。

その和田アキ子さんが極度のあがり症なのは有名な話。コンサート前の楽屋では、大好きなレイチャールズの写真を胸に抱いて気持ちを鎮めるという。また、島倉千代子さんは舞台にあがる直前の楽屋でいつも逃げ出したくなったそうだ。その島倉さんがある日、さだまさしさんと共演することがあった。本番直前にさださんが何やらブツブツつぶやいている。何かのおまじないかと思ったら、「どうか今日の舞台が中止になりますように」と言っているのが分かり、緊張しているのは自分だけでな
いと知って安心したそうだ。

大御所と言われるようなタレントでも本番前は緊張する。何度やっても緊張がなくなることはない。ただ分かっているのは、緊張してもうまくできる自分を知っていること。子供よりも大人の方がトイレを平気で我慢できるように、ベテランタレントは緊張してもパフォーマンスが落ちないことを知っている。

大御所ではない私の場合は少し状況がちがってくる。数年前まではひどいあがり症で、講師控え室から逃げだしたくなったことが何度かあるが、ここ最近はあがらなくなった。あれだけ緊張しやすかった私がいったいどうしたのだろうと我ながら思う。理由は分からないが、そうなる直前が一番ひどかった。いつもの顧問先の役員会で発言するときにも声が震えるようになり、その社長に気づかれないようにするのに懸命だった。しかもそれは若いころの話ではなく、わずか数年前の話である。それを克服すると、今度はどこへ行ってもあがらない自分がいた。

『がんばれ社長!今日のポイント』を書き始めたころは、メルマガを書くのにも緊張した。「どうしよう、千人も万人も読んでくれている。下手なことは書けないぞ」というプレッシャー。それに加えて「どうしよう、明日書くことがない」というネタ切れの不安。そうしたものと四六時中戦っていた気がする。

今はどうか。
今日書くことがなくても平気で昼ご飯に行くことができる。ランチを終えて戻って来たら何かのアイデアが浮かんでいるという自信があるし、事実、アイデアが何も浮かばなかった日は一度もない。

私のようにあがり症のあと、ほとんど緊張しなくなる人もいるが、大切なことは緊張してもしなくても、パフォーマンスが落ちない自分を作ること。和田アキ子さんの「国家独唱」を聞きながらそんなことに思いを馳せていた。